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【無一郎 side】
はぁ、はぁ、と肩で息をする。
視界の隅で、男の子と女の子がオロオロしてるのが見える。
―良かった、守りきれた。
…ごめんね、怖かったね。怖いところ見せちゃったね。
…僕なら大丈夫だから気にしないで。
情けは人の為ならず。君達は僕が助けた分だけまた誰かを救って、そしていつか巡りめぐってよい報いが返ってくる。
それだけで十分だから、さ。
…いや、もう返って来ないかも知れないけど、それでもいい。
君達が無事だったこと。
それが今の僕には一番のよい報いだから。
何て言ってあげたらいいんだけど、ごめんね。
もう、何にも言えないや。
…痛い、身体中が痛い。
意識が闇に溶けていくのを感じる。もうどうしようもないと、僕にはわかっていた。
全ての事が走馬灯のように蘇る。
…嗚呼。
時透 無一郎
「にぃ、さ…ん」
どうして、こんなときに思い出すのは、兄さんなんだろう。
…ううん、本当はわかってる。わかってるはずなんだ。
もう一度、兄さんと笑いあいたかった。
幼いあの日のように。
いつか聞いた姉さんの声が蘇る。
―無一郎、聞いて。ゆうはね、決して無一郎を嫌いになったりした訳じゃないの。
―いつでも、いまでも、ずっと無一郎のことを大切に思ってるのよ。
―無一郎が傷つかないように。無一郎が幸せに生きていられるように。
―無一郎を守りたいの。父さんや母さんは、人の為にした行いで死んだ。…無一郎にはそうなってほしくないのよ、ゆうは。
…ねえ、姉さん。
その話を聞いたとき、僕、全く信じてなかった。
昔はともかく、今は冷たい人で、そんなことを思っているのなら少し位の配慮があってもいいじゃないか、って。
けど、兄さんは昔から毒舌だったし、そう考えれば辻褄があう。
―わかってたんだね。僕、本当は。
全部、きっとわかってた。
…ねえ、兄さん。
僕が帰ったら、兄さん、怒るかな。
ボロボロになって帰ってきて、怒るかな?
それとも、笑ってくれるかな。
「頑張ったなぁ」って、笑ってくれるかな…?
身体中痛くて仕方なくて、けど僕は、僕は意識が溶けてなくなるまでずっと
そんなことばかり考えていた。
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廣岡唯 - 3だあ (11月21日 13時) (レス) @page28 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
廣岡唯 - 面白いwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwキャラほうたい (11月21日 13時) (レス) @page4 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
るるっち(プロフ) - 優衣さん» ありがとうございます!今思えばキャラ崩壊させすぎでは……?と思う描写も多いのですがそれでも今なお楽しんでくれる方がいるというのは本当に嬉しい限りです。コメントありがとうございました! (9月15日 13時) (レス) id: ef030e36e0 (このIDを非表示/違反報告)
優衣 - このお話よくできてますよ👌すごく面白いですこの作品‼️特に無一郎と有一郎の3分クッキングが面白くてすごく笑いました❗無一郎と有一郎のキャラ崩壊がすごく面白いです✨ (8月27日 19時) (レス) @page44 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
紬(プロフ) - まじですか!!!!めっちゃ嬉しいです//////楽しみにまってます** (6月29日 16時) (レス) id: 3716f5de4e (このIDを非表示/違反報告)
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