＊竜柱と幕間 ページ19
ふわふわ。くらくら。
時々そんな気分になることがある。
目眩でも立ちくらみでもない、本当に浮いているような。
そんな時私は、決まって涙を流しているのだ。
「あ…まただ」
今まさに、その状態なのである。
視界が潤んで霞んだかと思えば、頬を伝うあつい水分の感触。
こうなってしまえば落ち着くまで涙は止まらない。
なかなかに不便だけど、今は夜だ。
よっぽどのことがない限り、見つかることは少ないだろう。
これ幸いと外に出て、縁側に腰を下ろすと夜空を眺めた。
新月だったのか月は見えないが、星は爛々と輝いている。
昼間あれだけ騒がしくしているからか、こんなに静かな夜は新鮮だ。
うんうん。私以外寝静まっていて、たまに床が軋むような音が＿
「…待って？誰よそこにいるの。」
ふっと周りを見渡してみれば−少し離れた場所で富岡さんと目が合った。
あら、任務帰りかな。
話しかけても一言も返さないのはいつものことだが、何やら様子がおかしい。
私に気づき足を止めたというより、何かに驚いて立ち尽くしているような…
「富岡さ〜ん、流石に何か喋ッ−わ、え、ちょっと！？」
「誰だ」
つかつかとこちらに歩み寄ってきたかと思えば、ぐいと手首を強く掴まれた。
言葉が少なすぎて何のことだかさっぱりわからない。
「お前を泣かせたのは誰だ」
「…えっ別に誰も何もないけど。」
言われてみて思い出した、そういや私泣いてたんだったわ。
ありのままを告げると、富岡さんの表情はさらに険しくなる。
えっ何こわ…一体何に怒ってるの？
「私ときどきこうなるんだよ、なんかふわふわ〜って。病気じゃないとは思うけどね、みんなに言ったら注射されそうだし黙ってたんだけど…えへへ、バレたら仕方ないな。内緒ね？」
「…そうか」
富岡さんの表情はふっと穏やかになり、掴んでいた手も離して。
＿そして、ぎゅっ、と私を抱き締めた。
「＿！？！？えっ！？と、とみおかさ、え！？！？」
「…！！」
無意識だったのか、私の言葉でぱっと離れた。
えっこれ無意識とか嘘すぎるでしょ普段何考えて生きてんの？
暗くてよく見えないが、距離が近いのと星明りで少しだけ顔が赤いのが分かった。
あとこの体勢色々ヤバい。
「………忘れろ」
「は？？いやいやいやそれは無理な話だって！！」
「忘れろ」
「そもそもすっげ〜貴重な体験だから絶対忘れないからね来世まで語り継ぐわ！！」
「忘れろ」
「ゴリ押しやめろや！！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 314人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ころころ - ゆるふわですやん！ 知ってるんですか！ (2019年10月4日 20時) (
レス) id: 327fdb2cac (このIDを非表示/違反報告)
ネロ - こんのなんでも屋さん» コメントありがとうございます〜ッッ！！！わりと皆さんに気付いてもらえて内心同志を見つけられたようで嬉しいです！！ (2019年10月3日 17時) (レス) id: 647675a819 (このIDを非表示/違反報告)
こんのなんでも屋 - あーっあーっしぬかとおもった！しぬかとおもった！ってどっかで聞いた事あると思ったらぴーまるちゃんとこのうさぎさんw (2019年10月2日 19時) (レス) id: 8cb1996207 (このIDを非表示/違反報告)
ネロ - ゆきさん» わーコメントありがとうございます！！！続きます！！続編行きます！！体調管理にも気を配りつつ頑張っていきますー！！ (2019年10月2日 7時) (レス) id: 647675a819 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一瞬最終回かと思ってめっちゃびっくりしたけど、続くの文字を見てとりあえず一安心。この作品は今まで見てきた中で一番好きです。これからも投稿楽しみに待ってます。無理をせず頑張ってください。 (2019年10月1日 21時) (レス) id: fbbd62be54 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ネロ | 作成日時：2019年9月8日 15時
