6話 自然治癒不可 ページ7
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「どうしてっ、どうして……」
Aのことが好きなのに、好きで好きで堪らないのに
冷たくしちゃう
……いいんだ、これでいいんだ。
命の保証がない僕なんかと居ないほうがAは幸せだから、
嫌われたって別にいい。
Aが幸せならそれでいいのに、
それでもAに嫌われることは死ぬことよりも辛い。
「……好き、好きだA」
声が空気に吸い込まれていく
僕の声は届かないまま終わるのか
未練がましいなぁ
恋人たちの笑い声も、
僕を嘲笑っている声にしか聞こえない。
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「珍しいですね、時透くんが雑魚相手に怪我をするなんて。」
「……ごめんなさい」
「最近怪我が多くありませんか?それも小さな……」
「……はい、すみません」
「どこか体調悪かったりしますか?
些細なことでもいいので、教えてください」
「いや……、体調が悪いというか
僕がぼーっとしてるだけなので」
「疲れてるんじゃないですか?休息も必要です」
「僕は柱ですし、そんな訳にもいきません。
大丈夫です、ありがとうございます。」
「あら……」
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無意識に、紙飛行機を折っていた。
小さい頃Aと一緒に折った。
よく競争してたっけ。
風の抵抗を少なくして、なるべく左右釣り合うように折る。
飛ばし方にもコツがいて、なるべく水平に飛ばす。
僕が飛ばした紙飛行機は、壁に当たって垂直に落下した。
今は風が吹いてるから、
向きを工夫したらいっぱい飛ぶだろうな。
僕の気持ちも、紙飛行機みたいに簡単に伝わればいいのに__。
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「あれはかなり重症ですね……」
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作者名:*つむり* | 作成日時:2020年11月15日 1時