5話 未来を願う ページ6
「Aちゃんって、無一郎くんのこと好きよね……？」
「……ひぇっ！？」
反射的に変な声を出してしまって、
無一郎はもちろん、周りの人の視線が痛い。
が、そんなことも気にせず甘露寺さんは一気に笑顔になる。
「やっぱりそうなのね！！素敵よAちゃん！！」
「かっ、甘露寺さんっ……！」
「そうだ！！あんみつ奢るわ！！それともAちゃんはお団子が好き？」
「くっ、空気をよ……」
「く、空気……？空気が好きなのね……？
それならいつでも食べさせてあげるわ！」
「い……はっ、はい(諦め)」
すると、一部始終を見ていた無一郎が
面倒くさそうに口を開いた。
「じゃあ、僕は帰ります……」
「っ！！ま、まだ早いんじゃないかしら？
ほ、ほら！！Aちゃんも来たばっかりだし！
あっ、私用事ができたの！
じゃあ、二人で楽しんでね！！」
「かっ、甘露寺さん！？」
「あっ、お金は払っておくから安心して！！」
「そ、そういうことじゃなくて……」
「……」
甘露寺さんが出ていったあとの甘味処はとても静かだ。
無論、私たちの間には会話もない。
「……帰らなくていいの？」
「帰ったほうがいいなら帰るけど」
「……どっちでもいい」
私は生憎さっき甘味が届いたばかりなのでね。
食べ終わるまで帰れない。
甘露寺さんが気を利かせてこっそりご注文してくださっていたお団子……(皮肉)
「Aは好きな人いないの？」
答えの分かりきった質問を投げられるとちょっと反応に困る。
私の横で頬杖をついて、私とお団子に視線を往復させている無一郎は一体なにを考えてるんだろう。
よく分からないなあ、こればっかりは。
「だから……」
「あ、分かってると思うけど僕以外でね」
「……」
聞くことになんの意図があるの？
本当に考えの読めない人だ。
「いないよ」
「ほんとに？」
「ほんと」
あなた以外いるわけないじゃない。
……なんてそんなこと言ったらまたぐちぐち言われるに決まってる。
だから口をつぐんだ。
「Aは……、僕と違って未来があるんだし、
あんま執着せずに新しい恋探した方がいいよ」
「……どういうこと？」
「そのまんまだよ。
僕のせいでAの人生を無駄にしたくないから」
＿＿ほらまた。
あなたと一緒に生きる未来すら望んではいけないの？
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作者名：*つむり* | 作成日時：2020年11月15日 1時
