65,カミングアウト ページ15
碧井「あれ…でも彼女は
十代の時の彼氏が最初で最後だったって…」
倉木「ああ。正確には、当時のAは19歳です」
碧井「…早生まれだから?」
倉木「はい」
今は2月半ば。
彼女の誕生日は3月なので…あと1ヶ月くらいだ。
倉木「飲み会には呼ばれたものの、その場では一人だけ
未成年だからって…文句言いながらジュース飲んでましたよ」
碧井「あはは、想像できますね」
まぁ、未成年のうちから手を出さない辺り
やはり彼女は根が真面目だ。
倉木「で、恋話の流れになった時に
今日別れましたって話を聞いたんです」
碧井「そうだったんですね…」
倉木「その日は、“私に恋愛は向いてないかも”…ってだけで
話を終わらせていたんですけど、彼女がこの店に通う様に
なってから詳しい話は聞きました」
碧井「………」
だから、水無瀬さんの名前にも反応したんだ。
倉木さんは別れた理由も知っているのだろうか。
倉木「気になります?別れた理由」
碧井「……正直言えば、気になります」
水無瀬さんと別れた理由は……
イコール彼女の“トラウマ”だろうから。
倉木「教えましょうか?」
碧井「…いや、やめておきます」
倉木「はは、そうですね」
碧井「彼女が言わないなら、今聞くべきではないですから」
倉木「碧井さんはそう言うと思いました」
…この感じだと、たぶん彼は
俺が聞きたいと言っても教えてくれなかっただろうな。
倉木「別れた理由を知ってる俺からしたら
Aが隠してしまう気持ちも理解できます。
…普段は流暢に話す癖にこういう所で下手くそなんですよね」
碧井「ああ…案外、不器用な面もあって可愛いですよ」
倉木「さらっと惚気けました?」
碧井「あ…っ、いやそういうつもりでは…!」
倉木「あはは!良いんですよ」
碧井「ふふ、まさか倉木さんと
こういう話をする日が来るとは…思わなかったな」
彼が作る明るい空気に
ふと正直な感想が溢れた。
倉木「意外でした?」
碧井「意外というか……倉木さんもAちゃんの事、
好きなのかなと思っていた時もありまして…」
倉木「好きでしたよ」
碧井「えっ」
倉木「好きでした」
碧井「………」
2回言われた。
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作者名:麦兎 | 作成日時:2021年10月21日 0時