センセイ失格

046 助けに ページ46

.









｢ねぇ、｣





有岡｢んー？｣





｢どこいくの、｣









涼介くんと別れてから、何故だかわたしの腕を引いてどこかに向かう先生。なんか、普段ジャージだから………あまり見慣れない私服姿にすっごいキュンとしちゃう心を、隠すのに必死だ。






｢ね、……なんで来たの？｣






答えてくれないから、振り返りもしないでひたすら歩いていく先生の背中にまた問いかける。風になびく、おしゃれにデザインされたTシャツの裾を見つめながら。







有岡｢お前が泣いてっからさ、｣







助けにきたの、って。

テキトーなことばっかり言って。





冗談かと思って口ごたえするみたいに返そうと思ったのに、なんだか先生はそんな雰囲気じゃなくて。背中に感じるのは、









｢……なんでおこってますか。｣





有岡｢怒ってねーよ別に、｣





｢……、｣








ふ、と足を止めたわたし。

……だって怒ってる。どう見ても。








有岡｢ふはは、怒ってねーからほんとに。｣








ずっと引かれていた腕が急に止まって、やっとこちらを振り返った先生。わたしがあまりに不安そうな顔をしていたのか、近寄ってきて、ぐしゃぐしゃっと頭を撫でて笑う。









有岡｢もうさぁ、……上目遣いしねーの。｣





｢……してない、｣





有岡｢あんま可愛いことすっとチューするよ？お前、｣









……すればいいじゃん、





どうしたってそう思ってしまうから、もうだめだね。









.

047 捨ててほしい→←045 滴をすくって

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す