009 定休日 ページ9
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窓から差し込む光にうっすら目を開けると、見慣れた天井が虚しく映った。
すっかり乾いてしまった涙の跡を消すようにバシャバシャと顔を洗う。鏡の中のわたしは、どこか喪失感に溢れていた。
タイムスリップ最終日。
今日の0時にはユウリが迎えにきて、明日からはまた8年後の世界だ。
テーブルの日記を手に取り、ベッドに寝転がる。
もう終わったんだから。振り返るくらいいいよね。
未来から持ってきた10年日記。1日に書く量は少ないけれど、10年間もの月日を振り返ることができるこの日記に惚れ込んで買ってしまった。
昨日書かずに眠ってしまったことを思い出し、ペンを手に取る。
12月23日
[大貴くんにお別れを言った。
理由も言わず、ひどい別れ方だったのに、それでも大貴くんは優しかった。
本当は、ずっとここにいたい。]
明日になったら、8年分のページが捲られてしまう。
辞書を引くようにパラパラと捲り、8年後の白いページにため息をつく。また涙が零れそう。慌ててページを戻し、大貴くんとの出会いを振り返った。
6月24日
[念願だったニューワールド。
定休日だと知らず、入ったら警報が鳴った。
高校生の男の子に笑われた。]
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こんなにも人がいないものか。小さいけど、仮にも遊園地。
門も閉まってるし、休み?
いやでも、遊園地が休みって………
見渡すと、端っこの門が少しだけ開いている。嘘、入口ここだけ?夢だった遊園地のわりに、なんだか寂しいお出迎えだ。
恐る恐る足を踏み入れると、瞬く間に赤いランプが点灯し、ブーーーと警報が鳴った。
「わっ、何何何何。」
アワアワしていると、向こうのほうから誰かが歩いてくるのが見えた。捕まっちゃったらどうしよう。でもなんか若い。制服だし。……学生さん?
なんて考えていると、もうその人は目の前。
大貴「今日休みだよ?」
「や、休みなんてあるんですか?」
大貴「ふふ。うちね、定休日あんの。」
おもろいっしょ?と自慢げな彼。
「……うち?」
大貴「ん?あぁ、ここ俺んち。」
「えっ、」
にっこりと笑った男の子。
制服を着崩した今どきの高校生らしからぬ、可愛らしい笑顔だった。少年のような丸い瞳。でも捲った袖口から覗く腕は男らしく引き締まっている。
なんだか、耳が少し熱くなった気がした。
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いく(プロフ) - パレードが始まるが頭の中に流れました!!ステキなお話をありがとうございます。 (2020年8月9日 10時) (レス) id: bf142477e0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ - むぎさんの作品まじで大好きです。何億回でも読めます。 (2020年3月24日 22時) (レス) id: 62a0eb8cec (このIDを非表示/違反報告)
じゃん - 受験終わったあとの楽しみにしてて、今日読み終わりました。相変わらずむぎさん最高すぎます。大好きです。 (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2c5e964fc3 (このIDを非表示/違反報告)
梨(プロフ) - 好きすぎました!!めちゃくちゃ泣いたしめちゃくちゃドキドキしたし有岡くんが有岡くんで、このお話大好きです! (2020年3月14日 16時) (レス) id: d970aa184c (このIDを非表示/違反報告)
ねこ。(プロフ) - 完結おめでとうございます!めちゃくちゃ幸せでした!またいつか機会があれば、未来に戻ってから結婚までのお話も気になるので、読めたら嬉しいな〜と思いました! (2020年1月1日 13時) (レス) id: f99e88b778 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2019年12月1日 12時