スクラブ男子 2nd season (２)

067 遅かった ページ18

.

名取side









緋山｢何、めずらしく黙っちゃって。｣





藤川｢俺の言葉が染みてんだよ。｣





緋山｢嘘、全然ピンと来なかったんだけどあたし。｣





白石｢わたしも。｣





藤川｢嘘だろ？マジかよ、なんだよお前ら。｣









語って損したわ、って愛想のいい笑顔を浮かべながら鼻の頭をポリポリと搔く藤川先生。こんないい人、旦那さんにした冴島さんは幸せだろうなって。俺でも思うもん。Aにも幸せになってほしい。そのためには、俺が変わらなきゃいけないんだ。









藤川｢まぁ、いろいろ難しいこと言ったけど、要は何でも話せってことよ。夫婦円満の秘訣はそれに限る。心で思ってるだけじゃ伝わらないからな？言葉にしないと。｣





名取｢………はい、｣









素直すぎて怖いんだけど、って緋山先生が可笑しそうに笑うけど、さすがにこればっかりは頷くしかなくて。

患者の急変に対応しながら、明けていく夜に思いを巡らせていた。自分のこれまで、2人のこれまでを思い返して。ぐっと堪えた思いはいくつあっただろう。きっとAもそう。思ってても言えないこと、たくさんあっただろうし。言葉にしなきゃ伝わらない。今まで忘れていた大切なこと、やっとわかった気がした。









そして、仮眠を取りに仮眠室へ。

いつもはぐしゃぐしゃになってるベッドが、タオルケットも全て畳まれて綺麗になっていて、ぎゅっと心が締め付けられる。明日になったら連絡しよう。会って言おう。そう決めて眠りについた。









………それなのに。

もう、何もかも遅かったんだ。









.

068 今日も空を飛び回って→←066 それが夫婦

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す