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「…中也さん」
名前を呼ばれて、中也は書類から顔を上げた。
書類が沢山乗った机の前には、何時の間にか彼の部下が立っていた。
細身のパンツスーツを着こなし、赤茶の髪の毛を結い上げた女性。
彼女の名前は上野。
中也の補佐をする、云わば幹部補佐の役職に就いている。
「おう、如何した上野」
「ッ…あ、えっと、これ届けに来ました」
上野は一瞬言葉を詰まらせた後、抱えていた書類の束を差し出した。
中也は其れを受け取り、「流石。仕事早いな」と笑った。
「………あの、中也さん」
「何だ」
「凄い変な事聞いて善いですか?」
「内容によるけどな。云ってみろよ」
報告書に目を通し乍ら、中也が云う。
上野はパンツスーツを握り締める。
「……彼女さんの事、好きですか?」
紙を捲る中也の手が止まる。
そして、パチパチと瞬きを繰り返して、
「…………は?」
と、珍しく困惑した表情を見せた。
それでも、対する上野は真剣な顔をしている。
「何だ、藪から棒に…」
「だから私は変な事って云いました。
……お願いです。答えて下さい」
なんて突飛な質問なんだろう。
彼女自身もそう思っていた。
……でも、彼女にはこの質問をしなければならない理由がある。
中也は質問の意味を考えようとしたが、それも諦め、暫くして
「……あァ」
と視線を外し乍ら云った。
それを聞いて、上野はぐっと奥歯を噛んだ。
まるで何かを抑えるように。
「…………有難う御座います。済みません突然」
でもすぐに笑みを浮かべて、頭を下げた。
そして中也の呼び止める声にも振り返らず、足早に執務室を出て行った。
彼女が出て行った後、
訳が判らないまま愛の告白をさせられた中也は「何だったんだ…?」と呟いた。
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麦子(プロフ) - キティさん» 有難うございます、そちらも近いうちに完結させます! (2018年4月28日 20時) (レス) id: 564537986a (このIDを非表示/違反報告)
キティ(プロフ) - いつも楽しく読まさせていただいてます!deadAppleの方の続き、気になります! (2018年4月25日 0時) (レス) id: 3776331f45 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - rikoriko51さん» やっぱり何度も観たくなっちゃいますよね! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 564537986a (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - 高坂美月さん» 有難うございます、かっこいいと思って貰えて嬉しいです!頑張ります!(*^^*) (2018年4月16日 7時) (レス) id: 564537986a (このIDを非表示/違反報告)
rikoriko51(プロフ) - 私は映画を二回見に行きました。 (2018年3月21日 20時) (レス) id: a789258bf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦子 | 作成日時:2018年3月11日 14時