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33. ページ36






「ふー……」





男の口から吐き出された紫煙が、潮風に吹かれて流れて行く。

長い睫毛が一度二度、瞬きをした。





『あ、いた。左馬刻さん』





と、何処からか響いた女の声が男の名前を呼んだ。

ぴく、とそれに反応した彼はその赤い双眸を声のした方へ向けた。





「おう、来たか」

『あれ…銃兎さんはいないんですね?』

「悪かったな俺で」

『いえ別にそういう事じゃなくて…』





男…左馬刻の側にやって来たのは、白のワンピースを纏う少女であった。

ヨコハマの王様と少女とは、何ともおかしな組み合わせである。

少女は更に何か言おうとしたが、「まあいいや」とあっさり疑問を投げ捨てた。

これも左馬刻との言い合いを避ける為だ。





『それで、私は何を忘れたんでしょうか』





彼女は忘れ物を受け取りに来た。

しかし肝心のそれが思い出せないのだ。

これが貰い物だったとしたら大変申し訳ない。





「あー……ねえよ」

『え?』

「だから、忘れ物なんてしてねぇよ」





ぱちくり、と少女の金色の瞳が瞬く。

瞬時に彼女の頭に浮かんだのは「?」のみ。

自分が騙されたのだと理解するまでには暫くかかった。





『だっ…騙したんですか!?最低!』

「あれは銃兎が勝手に言ったんだよ!」

『はあ!?』





今度会ったら許さん…と少女が恨めしそうに言うのを聞いて、左馬刻は心の中で「あいつ死ぬな」と思った。

この少女、実は(物理的に)めちゃくちゃ強い。

ヘッドロックでもかまされたらきっと秒で落ちるだろう。





『…で、本当は何の用があるんですか』





不機嫌なまま、少女は左馬刻を見上げた。

この状態の彼女を刺激すれば問答無用で投げ飛ばされる可能性があるので、左馬刻は黙ってポケットに手を入れる。





「……ん」





そして、手の中に掴んだものを少女の目の前に差し出した。

金色の瞳が僅かに見開かれる。

左馬刻の大きな掌の上に乗っていたのは、小ぶりな耳飾りだった。

少女の口から「おお……綺麗…」と感嘆の声が溢れた。





34.→←**.



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麦子(プロフ) - いまづきさん» ありがとうございます。頑張ります(*^^*) (2018年12月6日 18時) (レス) id: 7a9f7e3baa (このIDを非表示/違反報告)
いまづき(プロフ) - 早く続きが読みたいですね! 応援してます! (2018年12月5日 23時) (レス) id: 14b35c0538 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - すらいみーる@元もちづきさん» リクエストありがとうございます…!了解しました! (2018年11月26日 18時) (レス) id: 7a9f7e3baa (このIDを非表示/違反報告)
すらいみーる@元もちづき(プロフ) - リクエストなんですが、主人公ちゃんと二郎が二人っきりでいちにいが帰ってくるまで留守番するお話読んでみたいです…!! (2018年11月25日 23時) (レス) id: 3b52443fef (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - 錐さん» ありがとうございます。とても嬉しいです。 (2018年11月23日 23時) (レス) id: 7a9f7e3baa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:麦子 | 作成日時:2018年9月22日 11時

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