JKとちびっこマフィア【番外編】 (ページ30)

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限界だったのかもしれない。

いきなり六年前の世界に飛ばされ、まだ出会う前の上司や恋人に出会い、慣れない仕事をさせられた。

本心を誰にも打ち明けられず、いつ帰れるかも分からない。

そんな中、緊張の糸ばかりが張り詰めていった。

それが、ぷっつんと切れたのだと思う。

＂A＂

脳裏に自分の名前を呼ぶ愛しい人が浮かぶ。

『…会いたい……』

ついに出た言葉。

我慢してた涙も堰を切ったように溢れ出す。

隣の中也が慌て出すけれど、もうそんな事御構い無しに涙は溢れる。

「はぁ！？」

『！な、なに…っ』

と、中也がいきなり大きい声を出した。

それに吃驚してAが大きく肩を揺らす。

横の彼はといえば、驚いたように目を見開いて口をパクパクさせている。

一体何事かと首を傾げると…

「お、おま……身体！自分の見てみろ！」

『…え？』

云われた通りにAは自分の身体を見下ろす。

そして鋭く息を飲んだ。

『……はっ！？何これ…！』

信じられなかった。

自分の腕が、脚が、半透明になっていたのだから。

しかも淡い金色の光が身体を包んでいる。

異能力があるこの世界では何でもありだけど、流石にAも体験した事がない。

……と、いう事はだ。

『若しかして……帰れる？』

今、自分の身に起こるとしたら其れしかない。

漸く元の世界に戻れるのかもしれない。

「は…？帰れるって……
────………っ、なあ！教えてくれ！お前は本当は何処から来たんだ！？何で俺達の事を知っている！？」

切羽詰まったような中也がAの腕を掴んで捲し立てる。

Aは少し驚いたが、ふっと微笑んだ。

『そんなに悲しい顔しないで』

今にも泣き出しそうな少年の頰に触れる。

真逆こんな急な別れになるとは思ってなかった。

太宰さんにも、他のお世話になった人達にも、何も云わずに去ってしまう。

結局彼らに嘘を吐いたまま、この世界から消える。

『(嗚呼……可愛いなぁ)』

ちゅ、とその額に軽く口付けを落とす。

『ごめんなさい、本当の事云えなくて。

………でも大丈夫。また会える』

身体はもうほぼ消えかかっている。

風もないのに髪の毛や服が揺れる。

『……私、待ってるから。

だから、絶対見つけてね』

そう笑うのと同時に、Aの身体は完全に夜の闇に溶けた。

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