@. ページ24
『ほら、入れ。今日からここがお前の家だ。』
「私の……」
『俺は彰(あきら)ってんだ。好きに呼んでくれ。嬢ちゃん名前は?』
「−−…」
『−−か。お前さんのその目。嫌ってほど見てきたからすぐわかったよ。
感情を知らない、捨て駒の目……−−は特に、傑作中の傑作って感じだなぁ。
だが……お前はなぜ、あそこにいた。その様子じゃ城から抜けてきたんだろ?』
「たぶん親だと思う2人が……任務で死んでいった……
人のために、、、なんとも思わず盾となる。
私は……誰かのために死にたくなかった、、、それだけ。」
『ふっ…あはははっ!!すまん!間違えた!!
お前さんは傑作なんかじゃねぇ。大失敗作だ!!俺と一緒だったかぁ!
死にたくねぇ……立派な感情だ。
なぁ、−−。これからお前は感情を覚えていくといい。
一族としては失敗作の俺だがぁ、人間としては、まずまずの出来のはずだ。
俺が、捨て駒だったお前を人間にしてやろう。』
.
.
.
この日……初めて人の優しさに触れた。
逃げ出したその日から、私を探しまわる者に殺.されかけては、殺.し、追われては、逃げ…
明日には死ぬかもしれない。食べることもままならない。
そんな日々を送っていた10歳の頃。
他人を蹴散らすことしか知らないガキが、普通の世で生き残れるわけがなかった。
そんな私を助けてくれたのが彰兄さん……
彰兄さんは10年もの間、追っ手に見つかることなく生きていたという。
灯台下暗しとはよく言ったものだった。
偽りの目撃情報を自ら流し続けては、わざと江戸から逃げないなんて、
当時、今の私とそう歳の変わらない少年がそんなことを遣って退けたのだから
同じ境遇にあった人だとは、到底思えなかった。
そんな人の心を持つ兄さんは私の知らないことを
たくさん教えてくれた。
楽しい、嬉しい。
悲しみや怒り。
驚き…感謝、そして信頼。
感情は心を豊かにしてくれた。
ありがとう。ごめんなさい。
おはよう。おやすみなさい。
行ってらっしゃい。ただいま。
いただきます…ご馳走さまでした…
言葉は力を持つことを知った。
感情を伝えるための術。
生きていく中で、人と人を繋げてくれる魔法のようなもの。
こうして私は、少しずつ…少しずつ…
10年という月日をかけて、人になっていったんだ。
302人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
むぎむぎ(プロフ) - いちご丸さん» 前作も読んでいただきありがとうございます!!よければこっちも楽しんでいただけると嬉しいです(*´-`) (9月20日 19時) (レス) id: 0ab5c4428c (このIDを非表示/違反報告)
いちご丸 - 実況者さんの小説から来ました!頑張ってください! (9月20日 17時) (レス) id: 7e45dba670 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:むぎむぎ | 作成日時:2023年9月14日 17時