34:(酷く悲しい) ページ35
.
「見つけた」
『………なんで、ここに…』
いや、聞かなくてもわかる。
様子を見た限り私がここに訪れることは少なからず知らなかったはずだ。きっと、さっきまで一緒にいたあの二人のどちらかが連絡を入れたのだろう。
それにしても、寮から来たのだとしたら早すぎやしないか?
返してと手を差し出すと、あっさりと資料をのせる始。
驚いていると、始は私の手を引き適当な部屋へと入った。
広さからして会議室だろう。
「行くのか」
『どこに?』
彼からの質問に首を傾げる。わからないフリだ。
しかし彼もわかったのだろう。力が入り、手首がギリ、と痛む。
「………行くな。」
『無茶言わないでよ』
そもそも決めたわけでもないのに。
どうして、私より私のことをわかってるの。
『行かなきゃ、あなたのことを忘れられない』
「忘れる必要がどこにある!!」
初めて聞いた声の大きさに、目が開く。
一瞬だけ揺れた身体を落ち着かせるように息を吐くと、彼の目が私をじっと見つめた。反らすことのできないその目に、私は固まった。
「行かないでくれ………」
離さないと言わんばかりの強さで抱きしめられ、あの日を思い出す。
ロケ先のホテルで彼の部屋に訪れた時と同じだ。
触れられた箇所が徐々に熱を帯び、離れようとしても腰に置かれた手がそれを阻止する。
『やめて………』
頬に、彼の手が触れた。
温かくて、大きくて、いとも簡単に包まれてる。
それから一瞬の瞬きの内に彼の顔はすぐ前に迫ってきて
私が言葉を発しようと口を開こうとした、その瞬間
『__________っ!!』
彼によって、塞がれた。
それは酷く悲しいキスだった。
140人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おむ(プロフ) - snowさん» ありがとうございます!初の別れ話だったので私もハラハラしてましたが無事完結できただけでなくこんなにも丁寧に素敵な感想をいただかて私も胸がいっぱいです…。こちらこそ、本当にありがとうございました(^^) (2018年9月12日 22時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
おむ(プロフ) - ひこさん» ひこさんんん!わ〜!ありがとうございます!始さん推しの方に受け入れてもらえるか不安だったのでこんな風に感想がいただけてとても嬉しいです!(^^)安心しました…。はい!これからもよろしくお願いします(^^) (2018年9月12日 22時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
おむ(プロフ) - 彩華さん» ありがとうございます!1番と言っていただけてとても嬉しいです…!最後まで読んでくださり本当にありがとうございました!これからもよろしくお願いします!(^^) (2018年9月12日 22時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
おむ(プロフ) - リラ@低浮上さん» ありがとうございました〜!はい!ご期待に応えられるようこれからも頑張ります!(^^) (2018年9月12日 22時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - 完結おめでとうございます。別れ話で始まり、ハラハラしました。皆の愛情の深さ、それに彼女の愛の深さが素敵な話でした。途中、もどかしくて、始さんを密かに応援してました。もう、胸がいっぱいです。素敵な話をありがとう。 (2018年9月12日 21時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おむ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=mucho
作成日時:2018年1月25日 14時