Art.3 ページ3
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「………わっ」
『驚かないよ。私、耳がいいから。』
背もたれのない丸椅子に座り、振り返るA。
色のついた人差し指で涙の靴を指しながら、微笑む。
「涙の音、すごく響いてた。」
「………Aの音も聞こえたよ。」
「私の音?」
「そう、Aの音」
_____おかしいことを言うね。
_____そしたら、Aも変ってことになるよ?
_____ほんとだ。じゃあ2人とも変だ。
Aはいつもアトリエに籠っている。
涙が行けばいつも同じ部屋の同じ場所にいるものだから、つい先日聞いたのだ。
「 Aは外にはいかないの? 」
するとAは目を開き、何度も瞬きをした。
少し考える素振りをして、口角を上げる。
『 私、ここが好きだから。』
絵と、本と、絵の具と、ペンと、紙と
涙のよく知るものから、知らないものまで。
'' 好き ''に囲まれた空間にいたいからだと、Aは言った。
『 だから、涙が私の絵を気に入ってくれて嬉しかった。』
「 ……そうなんだ 」
『 うん。』
数日前の出来事を思い出し、涙は絵に触れながらAに問う。
「僕、迷惑じゃない?」
『迷惑だって思ってたら、私ここに入れないよ。』
「そっか……」
心が温かくなるような気がした。
ほんの少し苦しくて、でも、嫌な苦しさじゃない。
「Aといると いろんなものに出会えるんだ。
不思議だよね。」
『……そうだね。不思議だ。
私たちが出会って、今こうやって話していることも不思議だしね。』
「………ワクワクするね?」
『うん。ワクワクするね。』
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おむらーす(プロフ) - てぃみ〜さん» ありがとうございます!可愛い涙くんが書けてよかったです!!私が楽しんで書いたものをそんなふうに褒めていただけて嬉しいです!ゲナウ頑張ります!少々お待ちください!お気遣いまでありがとうございます!! (2017年9月3日 11時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
てぃみ〜 - 完結おめでとうございます!終始涙くんが可愛くて…とても、とても素晴らしかったです!!言葉に出来ない…!作者様の書く全ての物語の展開が本当に大好きです!!ゲナウ楽しみにしていますね!!無理せず頑張って下さい!! (2017年9月3日 3時) (レス) id: f99a1ade31 (このIDを非表示/違反報告)
おむらーす(プロフ) - ちゅーるさん» ありがとうございます!!私のかく陽がかっこいいだなんてそんな…!もったいないお言葉…!ご期待にお応えできるよう頑張らせていただきますのでよろしくお願いします! (2017年9月2日 22時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
ちゅーる(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした。涙君の思いが実って本当に良かったです!おむらーすさんの陽くんはかっこよくて大好きなので、次回作期待してます! (2017年9月2日 20時) (レス) id: 5e2b033c1c (このIDを非表示/違反報告)
おむらーす(プロフ) - 練爛々さん» ありがとうございます!はい!覚えております!続けて読んでくださりありがとうございます!本当に嬉しくて嬉しくて…!お気遣いまでありがとうございます!精一杯頑張らせていただきます!よろしくお願いします! (2017年9月2日 18時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おむらーす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=mucho
作成日時:2017年7月8日 0時