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翌日、船がAの故郷である星に到着した。
婆さんに会えるのが相当嬉しいのか、珍しくAの頬が緩んでいる。
隠しているつもりなんだろうけどバレバレだよそれ。
聞けばずっと出稼ぎで仕事を転々としてきたから、1ヶ月も家で過ごすのは数年ぶりのことらしい。
そりゃ頬も緩むよネ、可愛い。
は〜あ。
これから1ヶ月もAがいないなんて、死ぬほど退屈なんだろうな。
昇降口が開いて船から降りていくA。
なんだかもう寂しくて、一緒に下まで降りてやる。
なんでお前そんなに嬉しそうなんだよ、ムカつく。
「振り回しちゃってごめんね、帰ってきたら死ぬほど働くから」
「そうだネ、帰ってきたら便所の掃除でもしてもらおうかな」
「…怪我しないでね」
「は?」
その小さな言葉を俺は聞き逃さなかった。
「あっ、すぐ治っちゃうから大丈夫か」
いや大丈夫じゃないし、今ので瀕死状態だし。
「じゃ、行ってきます」
「……」
そうしてAは背を向けて行ってしまった。
振り返ったら手でも振ってやろうと思ったけど、振り返ることもなく。
あー…これ、1ヶ月も耐えられそうにないな。
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作者名:mucha | 作成日時:2019年12月18日 6時