夢寐 Ⅲ (ページ40)

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“せっかくだからうちに寄ってお茶でも飲みましょう“と
誘うもんだから“じゃあ少しだけ”と控えめに返事をして
うちに来ることになったAちゃん

母さんが誘ったくせに
家に入ってすぐ鳴り響いた電話に出るはいいが
全く戻ってくる気配はない

「ごめんね母さんが」

「うんん、大丈夫。それより星輝くん大きくなったね」

ニコニコ笑いながら俺を見て言うAちゃん
そういえば最後にAちゃんと会った時は
まだ中学生だったもんなと思い出す

「Aちゃんはキャリーケース持ってたけど、どこか行くの？」

俺の質問に一瞬キョトンとした顔をしたけど
どうやらおかしかったみたいで今度はクスクスと笑っている

「大学の夏休みで実家に帰ってきたの笑」

「あ！そっか帰って来たのか！」

言われてみればそうだよなと納得する
出かけるならうちに寄る訳ないもんね

それから話を続けていると

「ね、星輝くん」

少しソワソワしたAちゃんの様子に首を傾げる

「…皇輝くん元気？」

ああ、そう言うこと？
こう言う時だけは勘が良くなる俺にみんな感謝してほしいな
さっきは迷惑かけたし皇輝に特別な差し入れをしてやろう

“皇輝なら部屋にいるよ”とAちゃんに伝えると
“そっか”と少し残念そうにする
“どうせ暇してるからいこ！”と
Aちゃんの手を引いて2階にある皇輝の部屋へと向かった