夢寐 Ⅲ (ページ39)

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特別な差し入れ＊KaK ページ39

時計の秒針音だけが響く部屋
机に広げられた沢山の参考書
間近に迫った試験の為にシャーペンを走らせる

そんなのお構いなしと言わんばかりに
真夏の暑さに加えて
隣の星輝の部屋から聞こえる爆音の音楽と
骨に響く重低音に段々イライラしてきて
こんな時の為にと用意してある耳栓を耳に付けた

暫く経ち“トントン”と部屋をノックする音が聞こえた気がして
シャーペンを置き立ち上がってドアを開けると
そこに立ってたのは母さんだった

「ごめんね、勉強してたんだ」

『いや大丈夫だけど、どこか行くの？』

「星輝と近くのデパートに行ってくるから、皇輝留守番お願いね」

俺の手の中にある外した耳栓を指差し
“星輝の音楽が煩くて集中できないでしょ？“と苦笑いする母さんに
“ほんとだよ”と俺は少し呆れた顔を返した。

「星輝、お兄ちゃん試験近いみたいだから少しは静かにしてあげて？」

「あー皇輝勉強してたんだ、ごめんごめん！」

買い物袋を両手に持ちながら母さんの小言に返事をする
悪いとはちゃんと思ってるけど、
好きな曲はスピーカーで聴くのが俺の拘りだからそこだけは譲れない
けど今日は静かにしないと流石にマズイかなんてぼんやりしながら歩いていると

「もしかして、Aちゃん？」

白いワンピースを着て前を歩く
髪の長い女性に母さんが声をかける
振り向いたのは随分と大人っぽくなったAちゃんだった