夢寐 Ⅲ (ページ29)

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「なんなの黒田って奴！」

光成が黒田くんに行くぞ！と声をかけて
ようやく解放されたゆーちゃんはめちゃめちゃ不機嫌
私があの子の見惚れている間に
黒田くんに質問攻めされたようでご立腹の様子だ

「ねー、ゆーちゃん。一目惚れってあるのかな？」

ゆーちゃんが黒田くんに対する不満をぶち撒けている途中で
発した私の発言に声を抑えて答えるゆーちゃんの声

「え？A。黒田に一目惚れしたの？」

あの男の子の存在を知らないゆーちゃんが
今日知ったのは光成と黒田くんのみ
光成は友達と知っているから黒田くんだと思ったのだろう

「ち、違うよ！あの子！」

廊下から見えるあの男の子を指差すと
品定めをするようにジッと見るゆーちゃん
珍しく苦言を言ってこないことに驚いていると

「へー…A話した？あの子と」

「うんん。話せなかった」

私の返事を聞くと、じゃ話にいこうと
急に乗る気になるゆーちゃんに引っ張られて
光成たちのクラスに入り込んだ。

案内役の子に連れて行かれて席に座るとメニュー表を見る
食べたいものが決まって“すみませーん“とゆーちゃんが言うと
飛んでやってきたのは黒田くん

「げ、黒田」

「ゆーちゃん俺のこと待ってたでしょ」

「待ってないから。イイから注文！」

また始まるかと思えばすんなり引いてくれた黒田くんに
おすすめと書いてあったカヌレとコーヒーを頼むと

「ねぇ、黒田あの子なんていうの？」

注文を取り終え行こうとしていた黒田くんを
ゆーちゃんが引き止め声をかける

指差す先にいたのはあの男の子で
拗ねたように“なんで？“と言う黒田くんに
“Aが気になってるの教えてよ”というと
今度はパーっと明るい顔になる

「ああ、あいつは“ワタ“だよ！
　ちなみにさっきAちゃんが頼んだカヌレは
　ワタがアレンジ案出したお菓子だから頼んで正解！」

呼んでこようか？という黒田くんの申し出に
慌てて“いいから！”と断りを入れる。
ちらっとあの子を見ると目があってて
慌てて視線を逸らした。