天職ってこういうことを言うのかぁ ページ28
「っ、てぇなァ。ちっとは可愛げある反応できないんで?」
「う、うるさいなぁっ」
「……まあ、もうなんでもいいでさァ」
はあ、とため息をついた沖田。張り手をかました手が彼の手に握られ、頭の上へと持ち上げられる。……あれ。ちょっと。
手、離されないんだけど。
「……頼まれただけでィ」
「え?」
「ここのオーナーに。“女神”が来るんだって言われてねィ」
唐突に始まった話に、一瞬頭が混乱する。それがさっきの私の問いかけへの返答だと気づいたのは、控え室のロッカーが意外と汚かった話を聞き終えた後だった。
(えっ、頼まれた、って?)
ここのオーナーに? 顔面見つめられて? 即採用??
「え、やっぱり天職――」
「生憎、俺ァ真選組以外で働く気はないんでねィ。天職はもう見つけてるようなもんでさァ」
「はあ」
「んで。例の“女神”サマがあの人。そこからでも見えんだろ。黒い服を着た女」
沖田の言葉にちらりと視線を向ける。暴力、暴言、酒、本音が飛び交うリングには確かに覚えのない人影が座っていた。
まるでその場に溶け込むかのように大人しいのに、どこか浮いているその姿。
「美人……!!」
「……お前、前も思ったが面食いか?」
「イエス!」
「イエスじゃねェよ」
「あと、うるせぇ」と小言を言われつつ、私はその女性をガン見する。
(いやぁ、やっぱり美しいものは見るだけで心が穏やかになるね!)
膝に悪魔を乗せているからか、余計心への浸透を感じられる。はぁ……嬉しい。
「ちなみにあの人、相当なザルだぜィ」
「えっ」
「俺が入れたテキーラバカスカ飲んでもあの調子でさァ」
――う、うそ、でしょ……?
ミリ単位も変わっていない表情を見て、血の気が引いていく。
あんなにお淑やかそうなのに、ザルって……。
「ん? ていうか、もしかしてみんなテキーラ入れたの?」
「入れたっつーか……俺がタワーやった」
「バカでしょ」
「ひでぇ言われようでさァ」
けろっとしてそう告げる彼に、ため息がこぼれる。
テキーラなんてそう入れるものじゃない。
(だいたい飲みなれてない人間が急に飲んだらどうなるか……)
……って、もしかして。
「……沖田、あんたもしかして酔ってる?」
「は? 何言ってんでィ。俺が酔う訳ねェだろ」
「だ、だよねー」
「気づいたらテメェに膝枕されてただけでさァ」
「酔い通り越してぶっ倒れてんじゃん!?」
――バカなの? アホなの?? 殺されるの??
やけに熱いと思ったらそういうことか!!
だからトキメキとかマジでいいんですって本当に→←願っても女神は振り向いてくれない
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羽衣瑠璃(プロフ) - おもしろかったです。続き、楽しみにしてます。 (5月17日 15時) (レス) @page33 id: 3065eb1929 (このIDを非表示/違反報告)
塩豆大福(プロフ) - みもりさん» 初めまして。お返事が遅くなってしまい、すみません…!まさかコメントいただけるとは思っておらず…!こちらこそ、読んでくださりありがとうございます!好みって頂けて凄い嬉しいです^^ これからも更新していくので、ぜひよろしくお願いします!! (2023年3月4日 23時) (レス) id: 6f796f69bc (このIDを非表示/違反報告)
みもり(プロフ) - ヤッバイおもろすぎます.....まだ主人公に靡いてない沖田さんもこれから伸び代ありそう...!とりあえず好きです好みですこれからもって頑張ってくださいいいい!! (2023年2月18日 1時) (レス) @page17 id: 838092b84b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩豆大福 | 作成日時:2023年2月7日 0時