二兎追うものはなんちゃらって言うけど、一兎を二人で追ったらどうなるの? ページ16
「「待てゴラァ!!!」」
「ひいいい!!」
走り出してすぐ。
見つけた変質者の背中に、腹の底から声を張り上げた。
(絶対にボコボコにして、飲食代と治療費をふんだくってやるんだから!)
禿げた頭が必死に逃げようとするのを、全力で追いかける。
バケツを転がされたり、物を投げられたりされながら、それらを綺麗に躱して、懐からクナイを取り出した。
手を振るえば、ひゅんっと飛んでいくクナイ。それは綺麗に逃走者の尻に刺さった。
「ギャァッ!?」
「おっ、やるじゃねーか」
「まぁね」
「何呑気に話してんだよっ!!」
ちっ。
尻を庇いながらツッコミもするなんて、やるじゃん。食い逃げ野郎の癖に。
あっちへバタバタ。
こっちへバタバタ。
江戸の街を縦横無尽に逃げる犯人。
先回りしてとっ捕まえたいのに、知らない道を行くせいでその足もたじろいでしまう。
(吉原なら直ぐに捕まえられるのに……!)
こうなったらクナイで仕留めるしか−−。
「ダリィ」
「えっ、ちょっ、! ぐえっ」
「ちょいと行ってきなせェ」
ふと聞こえたやつの気ダルげな声。
何かあったのかと思えば、突然首根っこを捕まれ−−そのままぶん投げられた。
「「えええええっ!!!?」」
犯人もこれは予想していなかったのだろう。
自分以外の悲鳴にも似た声が響いて、続く強い衝撃。
恐る恐る目を開ければ、ゴミ捨て場に横たわる犯人が目の前に。
「おーおー。案外よく飛ぶもんでさァ」
「そうだねー、びっくりしたわー。って、ちょっと!」
「なんでィ」
「なんでィ、じゃないでしょーが!」
しらっとした顔で見下げてくる奴に、私は近くにあったゴミをぶん投げた。
嫌そうな顔をされたが、知ったことじゃない。
「なんでゴミ捨て場に着地させんのよ!! 臭い移ったらどうすんの!?」
「え、気にするとこそこですかィ」
「それ以外に何があんの!?」
こっちとら自警団とはいえ吉原の女の子だよ!? 気にして当然でしょ!
まだ大丈夫だよね、と袖に鼻を近付ける。しかし、その淡い期待は呆気なく打ち砕かれた。
(うげっ、最悪っ)
今すぐにでもお風呂に入りたい。
お風呂に入って綺麗さっぱりになりたい。
「んな変わんねぇだろ。うわ、臭っ」
「だから言ってんだろそのお綺麗な顔にクナイ刺してやろうか」
「勘弁してくだせェ。う○こに殺されるなんて、俺のプライドに反するんで」
「絶対コロす……死んでもコロす……!」
優しさなんてふりかけにかけて食ってやる→←時にはかっこつけた方が恥ずかしい時もある。
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羽衣瑠璃(プロフ) - おもしろかったです。続き、楽しみにしてます。 (5月17日 15時) (レス) @page33 id: 3065eb1929 (このIDを非表示/違反報告)
塩豆大福(プロフ) - みもりさん» 初めまして。お返事が遅くなってしまい、すみません…!まさかコメントいただけるとは思っておらず…!こちらこそ、読んでくださりありがとうございます!好みって頂けて凄い嬉しいです^^ これからも更新していくので、ぜひよろしくお願いします!! (2023年3月4日 23時) (レス) id: 6f796f69bc (このIDを非表示/違反報告)
みもり(プロフ) - ヤッバイおもろすぎます.....まだ主人公に靡いてない沖田さんもこれから伸び代ありそう...!とりあえず好きです好みですこれからもって頑張ってくださいいいい!! (2023年2月18日 1時) (レス) @page17 id: 838092b84b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩豆大福 | 作成日時:2023年2月7日 0時