【イナゴ】マンガ家少女と少年たち～男子校はいろんな意味で危険です...～ (ページ36)

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アイデア３４　ＳＴＡＲＴ。一瞬の不思議な時。ページ36

「よし！桐谷！準備は出来たか！？」

向かいのゴール前にたった三国先輩がパンッとグローブを叩いて気を引き締めた。

「はい！！勿論！！！」

私は、軽くジャンプをし、１呼吸おいた。

私の前には、四人、そして、キーパー。

ゴールは別に決めなくてもいいらしいが、
せっかくなんだもん。決めたい。

ピー－ーーーッ！！！！！！

そして、円堂監督の笛の合図とともに私は大きく蹴り出した。

軽快なドリブル。

それは、一定のリズムを奏でるように前へ、前へと進んでゆく。

「来い！！！」

最初に立ちふさがったのはFWの倉間くん。
なんか、私のことを甘く見てる。

でも、

「よっ、と」

「何っ！？」

私は、ボールを器用に扱い、倉間くんを抜いた。

＿＿＿やばい...気持ちいい...＿＿＿

こうして、サッカーをする感覚。
そして、相手を抜き去る時の感覚は私を騒ぎ立てた。

お次は天馬くん。

キャプテンのおでましだ。

やっぱり、天馬くんはしつこい。

なかなか抜くことが出来ない。

なら...！

私は、ボールを高く上げ、飛び上がった。

それには天馬くんも驚いたようで目を大きく開いていた。

私、空中戦も得意だからっ。

今度の浜野くんは、タックルで来た。

正直、タックルが一番自信がなかった。

男子と女子では体格が全然違う。

うまくかわせるか...。

「あっ...」

一瞬その勢いで転けそうになりながらも
なんとか浜野くんを抜いた。

そして、最後に待ち構えていたのは、

「霧野くん！！！」

「行くぞっ！」

霧野くんは、DFの要。

うまくいくかはわからなかったけど、これが私の一番得意なプレー。

しつこく追いかけてなかなか先へと進めない。

私は、ボールをまるで、自分の体に吸い付かるかのように得意の柔軟な体で

一瞬のスキをつき跳ね上がった。

そう、まるでイルカが水しぶきを上げながら飛び出すかのように＿＿＿

そして、ふと聞こえてしまった言葉。

「A...」

そう、霧野くんは言った。

私は衝撃を受けた。

その瞬間、時間が止まったような感覚に陥った。

すべてがスローモーションで、私と霧野くんはただ、見つめ合っていた。

そして、それは、着地するとともにまた正常に動き始めた。

さっきのはなんだったのだろうか...。

幻覚？

にしても、すごく不思議は一瞬だった気がした。