海岸線の恋人 ページ46
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田「……んー……っ、」
昨日はいろいろありすぎた1日だったからか早く目覚めた俺は、ふらふらと練習室が様々揃った階を1人で散歩していた。充実しすぎると短時間でもよく眠れてしまうのが田島将吾という人間の構造らしい。
もう無限大2組は大丈夫。
1組にはもう、ぜったいに負けない。
あーでもほんと、誰もいないってなんて清々しいんだろう。
だってビハインドの密着カメラもないし、そういえばいつもところどころに設置されてる定点カメラも、なぜか今日は忽然と消えているし。
調整中なんだろうか、とひとりで首を傾げるも、まあカメラなんてない方がいいな、と即座に思い直す。
撮られてると思っちゃうと休めるものも休めないしね。
……そうだ。この辺だったなあ、確か。
西くんとAちゃんが仲良さげに帽子の貸し借りしてるの見つけたのって。
でもAちゃんにこの間渡した帽子はちゃっかり紙袋に丁寧に入れられて返却されていて、実はそれを見つけた時はちょっとしょげたんだっけ。
俺からその話をわざわざ持ちかけるのもなんだかなあ、とも思っていたけどそもそもそんな話をする余裕も時間もタイミングもなんにもなくて。
着々と、Aちゃんと同じチームでいられる時間もどんどん減っているのを今、急に実感する。
……なんかもう、さみしいな。やだな。
すると急に、スッと今横を通った練習室から楽しそうな声とリズムのような音楽が漏れ聞こえてきた気がして、足を止める。
田「……、？」
……早朝だよな。え、だって誰も歩いてないのに、誰か練習室にいるってこと？そんなことある？
もしほんとうに人ならスタッフさんかもしれない、と思ったしちょっと申し訳ないとも思ったけど、ゆっくりと、静かになるべくバレないように、ドアを押す。
「……別にええねんけどさ、海くん必要以上に触ってへん？」
帆「えっ、ええん？じゃあ……」
えっ、と、ほんの小さな声が漏れそうになって思わずガバッと口を抑える。
「アホか！ソーシャルディスタンス！」
帆「無理やし。俺Aのこと好きやもーん」
「はいはい、それならなおのことソーシャルディスタンス守ってくださいね中野くん」
帆「うわー！待ってそれほんまいやや！海くんがいい！！」
「うるさ……。迅くんよりうるさいわ」
帆「ワー！！！」
「え、聞いてた？人の話。5歳なん？」
……え、なに。俺は何を見てる？
えっ？夢……？
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作者名：魚屋 | 作成日時：2021年2月16日 23時
