雨が降ると君は死ぬ2 ページ27
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雨の日は、途端に何もする気が起きなくなる。
と、勝手に思ってる。
病は気からって言うし、元気だ!って思えばきっと元気にいつも通り振る舞えるんだろうけど、なんか今日はそう上手くいかない。たぶん、昼間っからあんな夢を見たからだ。まあ、こういう日もある。
柾「はい。コーヒーか、ココアか」
「……どっちでも、」
柾「は無し!ほら、どっち?」
「……じゃあ、こっち」
柾「はい、どーぞ」
「いや別に開けてくれなくても……ありがと」
……でもな。
今日はべつに、明日の本番に向けての最終調整だけだからいいけど(いや本当は良くないけど)、もし、
もしも、めちゃくちゃ大事な番組でのパフォーマンス日当日だったら?
雨が降ったら、またこうなって、みんなに迷惑かける?
まさやくんのくれた冷たい缶コーヒーにさっそく口を付けると思ったよりガツンと苦く、加糖かと思ったら完全に無糖だった。
柾「……俺さ、Aちゃんのことならなんでも分かるみたいなんだよね」
「……まあたしかに。今日も元気ないこと見破ってきたの蓮汰とまさやくんだけやからそうかもね」
柾「え〜なんだあ。蓮汰が先なの?それは残念」
「……べつに、気にしてくれなくてもいいのに。……」
ああ、だめだ。
もう今日はなんにも喋らない方がいいかもしれない。あの時みたいに、言わない方がいいことをこの口がスルッと、零してしまう。
柾「……泣いてる?」
「え?泣いてへんよ」
柾「……まあいいや。あんまり距離急に縮めてAちゃんに嫌われたくないし、別に俺もなんも言わない」
「……それは助かる」
柾「でも、1個だけ約束してくれる?」
「?……まあ、1個だけなら」
まさやくんは約束事を言わないまま、スッと小指をわたしに向ける。
……今どきこんな約束ゲーム、するんだ、まさやくんも。
なんてちょっと微笑ましく思ってから、わたしもそれにするりと、自分の小指を絡ませる。
柾「いい?……絶対に、1人で泣かないこと」
言い終わってから、ぎゅ、と、絡められた指の力が少しだけ強まった。
なんだろう。なんでなんだろう?
その言葉、誰かにも前に、言われた気がする。
柾「……泣きたくなったら、俺の事呼んで?約束」
誰、だったっけ。いつだ?
記憶を辿りながらジッと考えていたら、わしゃわしゃと、何故かちょっと切なそうな顔をしたまさやくんが、わたしの頭を撫でていた。
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作者名:魚屋 | 作成日時:2021年2月16日 23時