Aから始まるリズムに合わせて ページ3
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「……『気になるのさ How's your day oh tell me』」
会場が沸くのが分かる。
歌がサビに近づいていく度、トレーナーのみなさんも表情から高揚していくのも見えた。
久しぶりに立ったステージは広く、明るく、キラキラ、ギラギラとやけに輝いていていて、思い出す。
ここが好きだったこと、ここに立ちたくて仕方がなかったあの頃のことを、すごく。
「『君と知り合って ya 変わった人生が ya 些細なことすら 些細でなくさせてくれた ya』」
奏「『何から何まで 特別なmybebe 君のすがた 君のしぐさ 君の些細なとこまで』」
隣を見ればカノちゃんはいつも以上に楽しそうに気持ちよく歌っていて、
わたしはそれなら、楽しそうに気持ちよく、そして美しく、華麗に踊る。
「『みんなは言う あの少年が英雄になったと』」
奏「『Oh nah〜』」
「『僕らは言う 端から運命じゃなかったと』」
奏「『Oh nah〜』」
……カノちゃん、きれいだね、このステージは。
カノちゃんが一緒に出ようって声をかけてきた時、そんな資格なんてないって、断ろうと思ったんだよ。でもここまで来たよ、わたし。
もう許されないって思ってた。
全部を台無しにしたわたしなんかに、歌って、踊って笑って、見てくれる人を幸せにすることなんか、できやしないんだって。
それでも、ほんとは立ちたかった。
この舞台に立ちたくて立ちたくて仕方がなくて、踊りたくて仕方がなくて、でも、怖かった。
「『ただ 君を守るよ』」
奏「「『Boy with luv』」」
曲が終わって、少ししてから大きすぎるくらいの拍手が耳にぐわん、と伝わってくる。
少しだけ汗ばむカノちゃんに対して、汗っかきなわたしは顎からしたたる汗を手のひらで拭った。
自分が泣いてるのかと思った。
でも、泣いてなかった。
仲宗根「A！お前今までなにやってたんだ！？Why！？めっちゃめちゃ可愛いしカッコイイしキュートだしクールだし、……もう、beautiful。拍手！」
……ねえ。まだずっと怖いよ。
でも怖いから、踊るしかない。
踊ってる時だけ、忘れられるから。
足が折れても、
腕を拘束されても、
笑えなくなっても、
暗闇に包まれても、
無音の世界に放り出されても、
そばに誰もいなくて独りになっても、
ここに来たからには、踊るよ、わたし。
もう、そう決めたから。
KENZO「ふたりとも、本当に素晴らしかったです。……では、評価を発表します」
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作者名：魚屋 | 作成日時：2021年2月16日 23時
