日プのオオカミちゃん (ページ12)

今日:10 hit、昨日:33 hit、合計:99,300 hit

くっつき虫がふたーり2 ページ12

-

仲宗根さんの陽気で明る(すぎるくらい明る)いレッスン、KENZOさんの『Aクラスだから』という容赦のヨの字もない鬼のレッスンが終わってようやく一息。

今日のレッスン自体はこれで終わりで、あとは各自、自主練タイムに入る。

ここでどれだけ伸ばせるか、どこまで上げられるか、なんだろうけど、KENZOさんに「体力、他のやつよりないんじゃねーの」と指摘されたとおり、わたしには持久力がない。

見抜かれるんだなあと思った。

あの怪我があってだいぶ落ちたそれをまだ戻せてないことが、見破られてしまうんだと。

そしてそれを、ちゃんと見抜いて指摘してくれるトレーナーがいるこの環境に、感謝だなとも思った。

よってそんな体力のない21歳とは裏腹に元気な10代3人はひたすらパワフルに踊り続けているし、西くんと匠海くんは負けず嫌いなのかただの陽キャなのか一生2人で笑いながら踊ってる。

冬馬さんとアントニーくんは仲良さげにiPadを見つめていて、それはそれで癒されるし。

田「疲れた？水まだある？」

「あーごめんもうない。ありがとう」

田「いーえ。なんかでも、俺もさすがに疲れたなあ」

「ね。KENZOさんも怖いけど仲宗根さんもある意味怖いわ」

田「あーわかる」

このオーディションは、ほんとに毎日毎日が濃い。レッスン内容も、これに参加してる人達も、濃い。子供の頃にカルピスの原液使って勝手に作ったカルピスくらい濃い。

チラ、と隣にストンと座ってきたたじくんを見ると、ん？と言いたげな可愛らしい顔で見つめられて、いや、この人は爽やかだったわ、濃くはない。と、我に返る。

田「……でも、あれだね」

「ん？」

田「Aちゃんって、年下にも懐かれるタイプなんだね」

「……年下にも、ってことは、年上もっていう解釈でいい？」

田「え、あ、……はは」

「いや笑顔でごまかされても……まあでも、別にわたし後輩の面倒見とか良くないからあの2人が特殊な気がする」

田「あ、よくないんだ？」

「基本的に、……」

田「？」

「……西くんほどフレンドリーじゃないからね」

……あぶない。もっとドストレートに言ってしまって危うくたじくんに引かれるところやった。

疲れていると思考がにぶって言わなくていい事までするり、と口から滑ってしまいそうになる。

「まあだから、可愛いよ。あの二人は」

でもさすがに今、たじくんがどんな顔をしているのかを顔を横に向けてまで確認することは、できなかった。