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暫く無言で睨み合っていると少女が眉間に皺を寄せた。血の滲む右肩を強く押さえながら、苦痛に顔を歪めている。



『おい、肩から血ィ出てんぞ』

『...アンタには関係ない』

『可愛くねェ女』



力の抜けた手から刀を奪い取るのは容易かった。同時にふらりと傾いた身体を抱き留め、支えてやる。よく見ると元々白いであろう顔は青ざめており、額には汗粒が浮かんでいた。
...貧血か。土方は無言で少女を抱き上げる。おろして、というか細い声には聞こえていないふりをした。彼女は先程までの威嚇が嘘の様に大人しく、屯所までの道のりはあっという間であった。

傷口を手当してやり、食事と寝床を提供してやるとAはすぐに元気になった。身寄りがなく、身体を売りながら住む場所を点々としていたという彼女を、お人好しの近藤は浪士組で保護しようと言う。彼らを率いていた松平もその意見に賛同していた。
ただ一人...土方だけが首を縦に振らなかった。

コイツは女だ。こんな華奢な身体で、しかもガタイのいいごろつきばかりの組織で彼女がやっていけるとはとても思えなかった。



『そんなに言うならトシが護ってやりゃァいいだろ』



トシの目の届く範囲に置いておけば、ヤツらも手出しはできまい。それにただ護られるだけじゃねェ。性別は女だが、あの子は刀の扱いに慣れている。此処でなら彼女の力も活かすことができるかもしれない。
俺ァお前に護られる程弱くねェと思うけどな、と近藤はカラカラ笑っていた。

結局折れたのは土方だった。近藤は既に内外問わず多くの人間から信頼を得ており、浪士組を纏め上げるに相応しい働きをしていた。この人が自分達のリーダーになるのだろうなと分かっていたから、反対などできなかった。

やがて浪士組は真選組へと名前を変え、バラガキとクソガキはそれぞれ副長と副長補佐という役職に落ち着いた。土方の専属補佐であり、局長・副長に次いで偉い役職ともなれば誰も手出しはできないだろう。酒の席ではヒヤヒヤさせられることもあったが、土方が目を光らせていたお陰かAの立場がおびやかされる様なことはなかった。


そう、あの日からずっと、彼にとってAは"護るべき大切な存在"だった。



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組   
作品ジャンル:アニメ
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マツリ(プロフ) - Hiさん» 返信遅くなってしまいすみません🙇🏻‍♂️一気見ありがとうございます...!!嬉しいです! (3月3日 0時) (レス) id: 07cc4afb9c (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - とても面白いお話で今日一気見しました、、!!! 続き楽しみにしています(*^^*) (2月23日 3時) (レス) @page37 id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
マツリ(プロフ) - Honokaさん» ありがとうございます...!私も報われて欲しいです😂 (8月26日 22時) (レス) id: 07cc4afb9c (このIDを非表示/違反報告)
Honoka - 続き楽しみにしてます!!夢主ちゃん報われるといいな、、、、 (8月26日 16時) (レス) id: c2fc80e477 (このIDを非表示/違反報告)
マツリ(プロフ) - ななしさん» ありがとうございます!更新頑張りますね...! (2023年1月5日 12時) (レス) id: 153e8c8a98 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マツリ | 作成日時:2021年7月16日 16時

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