次男からの愛が重すぎて、妹である私の胃は持ちそうにない。【おそ松さん】 (ページ36)

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第31話「嗚呼、無情。」(※汚い表現注意) ページ36

バビュン！と質量を持った物体が限界まで速度を速めて移動した音が聞こえた。

風がブワァッと巻き起こる。

「え、今のなに？」

「さあ。……てか本当に風邪引いてる」

「A、大丈夫？」

そう言って近づいて来たのは、三男、四男、六男。
今の言葉もこの順番の通り。

「なんッッだよ！お前らかよ！びっくりさせんな馬鹿、心臓爆発するかと思ったわ！！」

理不尽にキレるおそ松兄さん。

当たり前だが怪訝な顔をする3人。

「いや、なんでお前ここにいんの？」

「決まってるだろ、Aの看病しに」

「あっかさせにきてんだろ…ッゲホ！げっほ！！う……おえっ……」

「あ、一松！そこのバケツとって！」

「はいよー」

目の前にバケツが構えられた。

すぐさま顔を突っ込んで、そのまま静止。

静まり返る周囲。

数秒経って、バケツから顔を離した私は微妙な顔を浮かべた。

「なんか胃にもどってった。むりに出したほうがいい？」

そう聞くと、「出しちゃえよ」とか「無理はしない方がいいよ」とか「俺もらいゲロしそう」とか様々な意見が出た。
最後のは、多分確実にこの部屋が地獄と化すと思う。

両手でバケツを抱きしめ、顔を突っ込んだ状態のまま目を閉じた。

背中が誰かによって摩られるけど、恐らく今のところは嘔吐することはない。…と、思う。

.

バケツは床に転がした。

そして何故か私の部屋の中で「ゲロ入れ袋はどんな名前か」というバカな討論が始まり、「汚物袋」勢より「鬼太○袋」勢が若干有利に進んで行った時、ある事件が起きた。

「あっれー？なんでAいるの？！」

バァン！！と襖を開け、底知れぬほど明るい声をあげ乱入して来たのは、トラブルメーカーの十四松兄さん。

この時点で、凄く嫌な予感はしたのだ。

でも、まさか本当に起こるとは思わなかったんだ。

明るい狂人は、私の姿を確認するなり「どぅーーん！！！」と飛んだ。

駄弁る兄たちが驚愕に満ちた表情を浮かべるが、もう遅い。

飛んだ先には、私の布団があった。

もちろん、私はそこで寝転がっていた。

私が反射的に避けるより早く、衝突。

この兄は、無情にも私の体の上にダイブした。

「ガッファ！！！あ……」

ろろろろろろろ。

そして起きたのは、当然と言えるような悲劇。

吐瀉物が辺りに広がる中、私は今なら死んでもいいと強く思った。