第佰廿弐話「御遠慮」 ページ36
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時間をかけて全身を綺麗に拭き取られた後、アオイちゃんに「では何かあれば隣の方(善逸くん)を使って呼んでください」とキビキビした態度で言われた。普通に言われたけど善逸くん利用しろって笑う。彼はほぼナースコールみたいな役割だな。
めっちゃ力を振り絞って私が頷いたのを確認した彼女はきよちゃんを連れて行ってしまった。
残された私は天井を見上げる。
恐る恐るといった様子で善逸くんが近付いてくる。先程のアオイちゃんの言葉を気にしてるらしく、大粒の涙をぽろぽろ零し、短くなった手でゴシゴシ拭っていた。
「うう、俺…Aちゃんに喜んでほしくて……うう、俺…俺……」
「……か…ぃえ……ぃつ、……ぅ……ぃ……ょ」
「……え?「嬉しい」?ホント!?じゃあ今度はバレない程度に持ってくるね!」
「ぃ…ゃ、………あ……ぇ………ぅ…」
「良いよ良いよ、遠慮しないで!君も綺麗なお花見て早く元気になってね」
残念ながら遠慮ではない(断言)
確かに口では「遠慮するわあんがとな」的な事言ったけど、本当に、もう良いんだ善逸くん。
私な、ちょっとな、花粉アレルギー持ってんだな。
正直な、日々君が持ってくる花で鼻がむずむずむずむずむずむずむずむずしてな、死ぬかと思うんだわ。
この身体じゃ満足にクシャミも出来ないし、毎日あれ、これもしかして私への試練?とか思ってます。
健気な善逸くんの気持ちを無駄にしたくないが己の身体(主に鼻)を犠牲にしたくもないというジレンマ。毎日が葛藤の日々である。
………ちなみに先程言った通り、この部屋にはいのっちがいるが、いつものような元気な猪突猛進さはまっっっっっったく見せていない。
なんか戦闘で喉が潰れたらしく、しかも何故か滅茶苦茶凹んだ様子で普段の彼とは考えられないほど大人しく寝台で横になっていた。
いやもう態度の幅がエグすぎて笑う。善逸くんが話しかけても「ソウダネ」やら「ゴメンネ」とか返しているのを聞いて笑いたくても笑えないのが今の状況である。色々含めてとても辛いです、はい。
……そういや山の中で下弦の鬼を追う時、彼の体を踏み台にした事を思い出した。善逸くん通訳の元、とりあえずもう一度謝罪の言葉を伝えれば「イイヨ、気ニシナクテ。弱クテゴメンネ」と返された。あまりに弱々しい態度に鍛えてない腹筋が死にそうになった。
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えのぐ(プロフ) - 初めまして!もうこのコメント欄みないかもですけど一応言っておきます…百弍話の最後「異性には厳しい」と書いてありますが同性では…?細かいかもしれませんが…!この作品大好きですん。更新頑張ってください…! (2019年9月18日 19時) (レス) id: 6a2a84fe35 (このIDを非表示/違反報告)
シアン(プロフ) - 今日1日で全部読んでしまいました()好きです!これからも更新頑張ってください! (2019年7月29日 20時) (レス) id: 8d130acbce (このIDを非表示/違反報告)
衣鶴奈(プロフ) - 夢主ちゃんが本当に面白すぎて1話ごとに必ず笑ってますwwめちゃくちゃ面白いです!更新頑張ってください! (2019年7月29日 11時) (レス) id: 8c5e0feeb8 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ - コメント失礼します。この作品が面白すぎて、全然原作知識ないのに壱から1日で読んでしまいました!!番外編も含め、続きすっごく楽しみにしています!! (2019年7月27日 22時) (レス) id: 8f71767d1e (このIDを非表示/違反報告)
棒人間 - 初めまして。この作品、とっても面白いですね!たまたま見つけて読んだのですが、この作品で鬼滅の刃の夢小説に目覚めました。応援しています!頑張って下さい! (2019年7月25日 21時) (レス) id: 804948c577 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱんこ | 作成日時:2019年7月21日 9時