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近肆、『閉ざされた記憶』 ページ39

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「………何ダァ、オマエ、漸ク逃ゲル気ニナッタカ」



カラスは私の顔と机の下に隠した風呂敷を見て、そう言いながら嘴で器用に毛繕いを始めた。
いや何だそれ、マイペースかよ君。てか「漸く」って、何。察してたの?



「………うん、逃げる。夜逃げならぬ朝逃げだね」



そう言って、にやぁ、と笑う。
やっぱり昔みたいに上手く笑えない。頰が引き攣ってる気がする。



「短い間だったけど、君には世話になった。本当に有難う。あの、君のご飯は居間に置いてあるよ。あと……今からあの人にご飯作るんだけど、できれば御内密にし」


「カァーー!!オイ逃ゲルナラサッサトシロ、ソンナ悠長ニシテル暇無イゾ!カァーーッ、モウ来ルゾ!!カァーーッ!!」


「えっ。嘘!」



急にカラスは喚き出した。
何そのテンションの違い、じゃなくて、もう来るの!?



「アイツ、カナリ気ガ立ッテル!任務デヘマシタ隊員殴ッタ!!怪我シタ隊員踏ミ付ケタ!!ソレデモマダ気ガ収マッテ無イ!!」

「は、仲間殴った?踏み付け?何で、てかそれ隊立違反ってやつじゃ」

「喋ッテル場合カ!!マタ(・・)オマエガ酷イ目ニ合ウゾ!!」

「……っ、!」



カァカァ鳴き喚くカラスは私の頭上を旋回する。

黒の羽が落ちた。



床に、





前、明らかに苛ついた様子のアイツの気に運悪く触れてしまった私は、紐できつく縛られ散々殴られ蹴られ甚振られ、暫く外へ出してもらえなかったあの、人間を人間として見てもらえないような目。
私を放置してどこかへ消えたアイツを、それでも誰も頼ることができなかった私は泣きながら血を吐いてアイツのかえりをまって、くらいよるもただふるえながらこのままおににたべられるんじゃないかって、このまましぬんじゃないかって、あの、ゆか、しばられてとてもいたくてなにもできなくてないていたわたしがころがっていたゆか、に、くろい、黒い、羽根。羽根が、おちて。



身体が完全に硬直した。


まただ、呼吸が乱れた。
息が満足に吸えなくて苦しい。
呼吸の仕方を忘れたみたいに唯喘ぐように息を吐く。


心の底に眠っていたあの忌々しい日々が、鮮明に覚えているあの“恐怖”を今、はっきりと思い出してしまった。



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近伍、『慈悲と祈り』→←近参、『漆黒の』



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設定タグ:鬼滅の刃 , 我妻善逸 , トリップ   
作品ジャンル:恋愛
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葵羽〜best friend group〜(プロフ) - 善逸の誕生日ということで、「善逸君はぴば!」のお話を見にきました…何回読んでも面白い…凄く好きです…! (2020年9月3日 14時) (レス) id: bccf6ec4c9 (このIDを非表示/違反報告)
- 面白いです!更新頑張ってください! (2019年9月17日 20時) (レス) id: 5aaa39b99e (このIDを非表示/違反報告)
もこ - とてもすき! (2019年9月17日 12時) (レス) id: fcbb1370f0 (このIDを非表示/違反報告)
まえむ - え、鴉かっけぇ…続きが気になりすぎます!!!更新頑張ってください!! (2019年9月17日 1時) (レス) id: 572cac2bfb (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 更新ありがとうございます!何だかハラハラする展開…!続きも気になります(o>ω<o) (2019年9月15日 5時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱんこ | 作成日時:2019年9月1日 11時

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