＊捌！ ページ33
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ぽん、と私の手が、漸く木の家に触れた。
死に物狂いの綱渡り、命綱無しの一本勝負。私の……いや、私たちの勝ちだ。
仰向けになり、グッタリと四肢を投げ出していた善逸君は、息も絶え絶えに独特な呼吸を繰り返していた。
でも浅い。毒がもう、全身に回って……
木を登った時と糸を無理矢理歩いてきた時、手足の彼方此方に付いた擦過傷。血が流れて空気に晒すとぴりぴり痛むが、私の痛みなんか彼と比べるまでも無い。
虚ろに空を見上げていた彼の側に膝を付き、手を握る。冷たかった、体温がみるみるうちに失われていく。私の温もりを分け与えられるなら、どうか。ぎゅっと握って、彼の手を胸に押し付ける。
「善逸君、善逸君……有難う。ほんとに、ありがとう……死んじゃだめ、お願いだから……」
ぽろぽろと涙が溢れる。
彼の目が、ゆっくりこちらに向いた。
ようやく私に気付いた。小さく、ゆっくりと口を動かしていたが聞こえない。風に掻き消され、何も聞こえない。
＿＿＿＿＿＿＿泣かないで
それでも。私には、そう聞こえた。
自分の状態を後回しにしてまで彼は、そう言ってくれた。
「……泣いてない、泣いてないもん」
鼻を啜り、グッと下唇を噛み締め、無理矢理口角を上げて笑った。
猫を被る事を忘れた、情けない女の醜い笑顔だ。
それでも彼は、微かに頬を緩ませて、笑うのだ。
呼吸音が小さくなる。祈るように彼の手を握り、彼の「生」を願う。
誰か、お願い、善逸君を助けて。優しいこの子を助けてあげて。
そんな祈りも虚しく、血の気が失われて行く彼の顔。手足も短くなり、私が握る手とは反対の手は袖で隠れて見えなくなった。
何も出来ない自分が酷く情けなくて、涙が溢れてくる。堪えるように上を向く。
月明かり、大きな月。今日は満月だった。
そんな月を背景に、いつの間にか
「え、」
「貴女は見る限り無事なようですね。問題は……もしもし、大丈夫ですか？」
微笑みを浮かべた彼女。善逸君と同じ隊服を纏っていた。……鬼殺隊の人？
突如現れた彼女を呆然と見つめていれば、彼女は善逸君の様子をジッと見つめた後、懐から注射器のようなものを取り出した。
「上手く呼吸で毒の巡りを遅らせましたね。それが出来ていなければとっくに蜘蛛にされてるところでした」
そう言って、善逸君の短くなった手を掴み、彼女は注射針を刺した。
彼は痛みからか、顔を歪ませる。
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葵羽〜best friend group〜(プロフ) - 善逸の誕生日ということで、「善逸君はぴば！」のお話を見にきました…何回読んでも面白い…凄く好きです…！ (2020年9月3日 14時) (
レス) id: bccf6ec4c9 (このIDを非表示/違反報告)
聖 - 面白いです！更新頑張ってください！ (2019年9月17日 20時) (レス) id: 5aaa39b99e (このIDを非表示/違反報告)
もこ - とてもすき！ (2019年9月17日 12時) (レス) id: fcbb1370f0 (このIDを非表示/違反報告)
まえむ - え、鴉かっけぇ…続きが気になりすぎます！！！更新頑張ってください！！ (2019年9月17日 1時) (レス) id: 572cac2bfb (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 更新ありがとうございます！何だかハラハラする展開…！続きも気になります(o>ω<o) (2019年9月15日 5時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱんこ
| 作成日時：2019年9月1日 11時
