*漆! ページ32
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………っもう!
「なに!!……え?」
蜘蛛を見れば、蜘蛛はじーっとこっちを見ていた。
えっどんな感情、本当分かんないからやめてよ、あと足、乗せたままだから擽ったい。
蜘蛛が何かを言いたそうにこっちを見て、違う方向を見た。
その視線を追うように、私も見る。
「……………糸?」
小さく零せば、蜘蛛はこくりと頷いた。
…………登れと?
というか意思疎通、出来た。カラスも出来たし蜘蛛とも出来た。トリ○ア先生かよ、動物と心を通わせるって、ト○シア先生か獣の奏者の子……エ○ン?エリ○はちょっと違う?
いや、そんな事はどうだって良いんだ。
善逸君、さっきから呼吸音が小さくなっていく、善逸君の元に。
初めて木に登る気がする。着物の裾を捲り上げ、久し振りに足を露出させた。陽に当たらず白くなった私の足。こんな不健康そうな色じゃなかったのに、なんなら学生時代は沢山走り回るような元気っ子、だった筈。
先程襲われそうになった蜘蛛達に先導され、よいしょよいしょと登る。掛け声がオバサン臭いがこれでも必死である。
なんなら蜘蛛達が引っ張って助けてくれた。針が消え、ただの細長〜い舌で。優しさ溢れる蜘蛛達。君ら、本当は人間だったもんな、あの親蜘蛛に無理矢理従わされてた被害者だもんな。君達が元の姿に戻れる事を心から願う。
高い位置。下を見れば、地面は遠く見えた。
さっき落ちたからか、足が震えた。
でも私達を助けてくれた善逸君は、私達の為に戦って、酷く傷付いた。早く君の元へ行きたい。
細く、限りなく透明な糸に足を乗せた。
……草履は邪魔だ、脱ぎ捨てて地面に放る。素足で行く!
そろり、そろりと進む。なんなら家の周りに沢山の糸があるから、ちょっと足を滑らしても何とかなりそう。
後ろには心配そうに着いてくる蜘蛛達がいる。優し過ぎか君達。善逸君のお陰で親蜘蛛の洗脳から解き放たれたから?自分の意思でやってるの?
「(あとすこし、あとすこし……)」
歩く事は無理だと早々に分かったので這って進む。この方が確実だ、下から私を見たら何もかもが丸見えだと思うが今は構ってられない。そんな事はどうだって良かった。
滑り落ちそうになった時さえ、悲鳴は押し殺した。正直泣きそうだけど、なんとか蜘蛛達に引っ張って貰った。
そんな私たちを、月は明るく照らしてくれる。
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葵羽〜best friend group〜(プロフ) - 善逸の誕生日ということで、「善逸君はぴば!」のお話を見にきました…何回読んでも面白い…凄く好きです…! (2020年9月3日 14時) (レス) id: bccf6ec4c9 (このIDを非表示/違反報告)
聖 - 面白いです!更新頑張ってください! (2019年9月17日 20時) (レス) id: 5aaa39b99e (このIDを非表示/違反報告)
もこ - とてもすき! (2019年9月17日 12時) (レス) id: fcbb1370f0 (このIDを非表示/違反報告)
まえむ - え、鴉かっけぇ…続きが気になりすぎます!!!更新頑張ってください!! (2019年9月17日 1時) (レス) id: 572cac2bfb (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 更新ありがとうございます!何だかハラハラする展開…!続きも気になります(o>ω<o) (2019年9月15日 5時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱんこ | 作成日時:2019年9月1日 11時