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「それがさぁ、俺的には一番いいんだよなぁ…」
さすがにそれを強要するのは彼も気が引けたのだろうか、さっきまでとは打って変わって小さい声でチラチラと私の様子を見ながら言うさっくん。
「いやいや…」
「2人なんか、お似合いだと思うし」
「えぇ…」
「俺好きなんだよー…2人の雰囲気」
まただ。
"私とふっかの雰囲気"
「……そのさ、私とふっかの雰囲気って、何？」
もうこうなったらはっきりしてほしい。
私とふっかが作り出す雰囲気って何なのか。
みんなは何に惹かれてそう言っているのか。
「えー…なんて言うかぁ」
自分が分からないんじゃ、納得できる訳なんてない。
「でも雰囲気ってさ、雰囲気でしかなくない？」
でも、その答えは出なさそうだ。
「その人から滲み出る空気っていうか、言葉にできない感覚っていうか…多分2人がいい相性だから出るもんじゃない？」
私が何かを言う暇もなく、あ、来た。ってさっくんが呟いた。目を向けると可愛らしく手を振る凛の姿が少し遠くに見える。
「……私とふっか、か」
もう意識は私の彼女に向いているさっくんに聞こえないようにそう呟いた。
過去の写真を見て、そして今でさえこんなに周りから言われるのに、私は彼を好きじゃなくなったし彼は私を好きになる事が無かったんだ。
それが結果なんじゃないのって、思うんだけど。
「あれ、ふっかは？」
「まだ来てない、何してんだよまじー」
「あ、ねぇねぇさっきね」
「ん？」
2人の背中。
凛の身長に合わせるように屈んで耳を傾けたさっくん。
そんな姿を見てぼーっと思う。
私とふっかは別に友達でしかなくて、その身長差を埋めるような恋人らしいことなんてする訳なくて。
そんな私たちからどんな雰囲気が出てるっていうのだろうか。
その雰囲気がいいものだったとして
なぜ私は彼への恋心を無くしたのだろうか。
「Aー、あいつちょっと遅れるってさ。先店入ってよ」
「……あ、うん」
みんなして勝手なこと言わないで欲しい。
私とふっかはそんなんじゃない。
なぜか少しだけモヤモヤしてしまって、私は2人から少しだけ距離を置いて歩いた。
「わ、雪降ってきた」
そう、前のさっくんの声で顔を上げた時に見た降り始めた雪。
その一つを目で追いかけた。
「えー、積もるかな？」
「いやぁこれくらいじゃ積もらないっしょ」
それは確かにあったはずなのに。
消えて、なくなった。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2024年3月29日 22時
