陰キャとさくまの水曜日 2

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「あれ？おはよ」

「おぉ、おはようさん」


今日は木曜なのに前掛けを締めながら挨拶してくれたのは休みなはずの康二くんだった。


「休みじゃないの？」

「誰かが来れんくなったらしいで、店長から連絡来てな」

「あ、そうなんだ」


康二くんは大変だろうけどちょっぴりつまらない木曜日に話し相手がいるのは嬉しいかもしれない。最近知ったのだけど水曜と木曜の売り上げにそんな大差はないらしい。それでも感覚が違うのは慣れてる3人じゃなくて木曜に入る子がまだちょっと仕事を覚えきれてなかったりするからだった。

その子たちに教えながらお客さんの対応をしたり、色々仕事をこなしていたので勝手に水曜より忙しい気がしていたみたいで。康二くんが入るなら今日も雑談日和になるんじゃないかなと嬉しくなった。



「やっぱ3人が一番いいなぁ、連携の良さが違うもん」

「それは俺も思っとるよ、だから早く水曜に帰ってきてや」



佐久間くんと会える水曜日と康二くん目黒くんと会える水曜日。どうしても2人とは別の日でも会えると思うと佐久間くんを選んでしまう自分がいた。

帰ってきてという言葉に素直にうんとは言えない自分。

大学生になって初めて私にちゃんと話しかけてくれたのは康二くんだ。出会いはバイトだったけど、同じ大学ってだけで何だか心強かったし少し後に入ってきた目黒くんと仲良くなれたのも康二くんがいたからだ。



「なんや、意外と木曜も暇やな」

「康二くんがいるからだよ、メンツがいつもちょっと弱くて」

「逆にAちゃんおらん時どうしてたんやろ」

「店長が最前線でさばいてたらしい。笑」

「まじか、あの人いつも厨房から出てこーへんのに」



あぁ、こんな感じだったな。
入らなくなってしまった水曜日を想う。大体3人だけどどっちかがいなくてもどっちかがいた。何でもない雑談をして、たまにくるお客さんの相手をして。のんびーり働いてまた雑談しながら閉め作業をして賄いを食べる。

勉強が本文なはずの学生が大学よりもバイトが好きってどうかしてると思ってたけど。強制的に一緒にいる時間が作られて自然とコミュニケーションを取ることになるバイトという時間は人間関係において自分からいけない私にとってはいい環境なんだろう。


………強制的、か。


あの人たちも強制的だったな、そういえば。



今日こっそり食べたレタスだけのサンドイッチは、なぜかとても美味しかった。

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