陰キャとさくまの水曜日 (ページ31)

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「あー！いた！やっほー！」

図面提出、模型完成の締め切り日。
建築棟は慌ただしい。

私も最終調整や模型の説明書きを準備したりとバタバタしていたのがやっと落ち着いて。散らかったデスクを片付けていたら建築棟でもいよいよ聞き慣れてしまった声が耳に入る。

「あ…どうも」

「すっげー！あちこちにミニチュアの街があるみたい！」

ガラス面の仕切りだからワンフロアに見えなくもない実習棟、通路を挟んで隣り合った2部屋に模型がずらりと並ぶ光景は私もちょっと好きだったりする。頑張ったなぁって感じ。

阿部くんの隣で目をおっきくしてきょろきょろしている佐久間くんはやっぱりどこか犬みたいだ。ボール投げたら喜んで走って行きそう。

「無事に終わった？」

「おかげさまで。今回は特につらかった」

「まじ？いつも余裕そうなイメージなのに」

「ほんと喧嘩売ってる……」

「そっちだって結局買ったでしょ。笑」

たまーに私の作業を覗いては煽ってきてた阿部くん。爽やかな出で立ちしてるくせして意外と言うこの人はいつも余裕そうだった。作業している所は遠目で見えたけど、私は一切阿部くんのデスクを見に行かなかった。

てか、そんな暇なかった。
確かにいつもはこんなギリギリにならないし、作り始めてる頃には構想が固まっているからもうあとは黙々と作るのみだから。けど今回はギリギリまで悩んでたからもう急ピッチ。誰よりも建築棟にいた気がする、それは毎回かもしれないけど。

「あっはーバチバチだね？」

険悪な顔して阿部くんを見る私を見て楽しそうに笑うこの人もどうかと思う。あなたのせいでこんなことになったのに。

「知ってる？結構俺ら注目株みたいよ。いつも僅差の2人が今回はマジで戦ってるらしいって噂が流れてるんだって」

「とんだ迷惑…絶対阿部くんのせい……」

「えー？そんなことないよー」

この課題期間で気づいたことがある。阿部くんは人気者だ。作業している姿を見てかかっこいいね～って言ってる女子の声が良く聞こえてたし、私が煽られている時も謎に視線を感じていた。

「とりあえず今日はお互いを称え合おうじゃない、見せてよ模型」

またふふって笑う阿部くんはいつになく楽しそうだ。佐久間くんは2人いつの間にか仲良くなってるーってまたニコニコしてる。誰がこんな人と。