私のために ページ37
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「さっくん？どうしたの？」
ある場所で足を止めたさっくんは私の声がけにくるりと振り返る。優しく笑って、ずっと握っていた私の手を離した。
「この先にいるって。Aちゃん行っておいで？」
「一緒に行くんじゃないの？」
「俺は照と一緒に待ってる！」
その時バサッとあの音が聞こえて。振り返るとそこには黒い羽をしまいながら地上に降り立った照くんがいた。
「照くん…」
「何かあったらすぐ呼ぶしここから動かないから1人にしてほしいって。なんも言ってなかったけど、多分Aに会いたがってるよ」
照くんもまた優しく笑っていた。
さっくんとバトンタッチしてからずっと一緒にいたであろう彼。
「そうかな」
「俺からは伝えてないから。行ってあげたら喜ぶと思うよ？」
いつかあぶなかっしいって言ってたのにその表情は穏やかだった。むしろ少し悪戯に笑っている。
「……うん、行ってくる」
いざとなると少し怖くなってしまう。彼は今どんな状態で、どんな事を考えながら1人でいるのか。私が行ったら拒絶さえしてしまうんじゃないかって。
でもさっくんと照くんが背中を押してくれている。彼らのためにも…阿部くんをあの体に戻さなきゃ。
「A、大丈夫」
2人に背を向けた時、照くんの頼もしくも優しい声が聞こえた。私は振り返らずに頷いて、いつか阿部くんに手を引かれながら進んだ道を進んでいった。
ここはあの日、2人で訪れた公園だ。
この先を進むと小さな橋があって、流れる川の音と木々の揺れる音しか聞こえないあの幻想的な空間が広がっている。
今度こそ、彼が消えてしまわないように。
もうあの手を離すことがないように。
彼の手が、温かくなるように。
あの橋が見えてきた。ひとつ息を吐いてからこの空間に入り、橋の上から周りを見渡す。でも絶対ここにいるはずなのに、なぜか彼の姿はなかった。
照くんに言ったことを破ってどこかに行ってしまったとは考えられなかった。私が来たことに気づいて隠れてしまったのか。
「阿部くん、隠れてないで出てきてよ」
橋を降りて、すぐそこの川のほとりにしゃがみ込んだ。あの日のように川の水にそっと触れると、やっぱり氷が入っているかのように冷たくて。
でもその冷たさが彼の心を表してるような気がした。温めてあげたくて、ずっとその水に触れていた。
「……阿部くん、あのね」
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ぽぷら(プロフ) - とろろさん» お読みいただきありがとうございます！全て…！嬉しいです🥺小狐さんかわいいですよね、私も想像して癒されてます（笑）ぬいぐるみいいな〜！なんか不意に欲しくなる。後少しですがこれからもお楽しみいただければ嬉しいです！ (2022年7月5日 17時) (
レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
とろろ(プロフ) - 今までの作品全て大好きで繰り返し読んでいます。今回の子ギツネ康二くんがあまりにも可愛すぎて、白いキツネのぬいぐるみを買いました笑 めちゃくちゃどうでもいい報告をしてすみません。これからも更新、楽しみにしています。 (2022年6月23日 23時) (レス) @page50 id: f9c589a444 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - 123456Yksさん» コメントありがとうございます！そして他の作品もおよみくださってるんですかね？嬉しいです、ありがとうございます☺️確かに何だか通じてますね、正直全く意識はしてなかったんですが、彼は幸せを運ぶって概念が似合うなぁと思いますね🌸 (2022年6月17日 23時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - めめ担さん» お読みいただきありがとうございます！彼の秘密や気持ちがどんどん明らかになってますね、これからもお楽しみいただければと思います☺️ (2022年6月17日 23時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
123456Yks(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます。ずっと様々な作品拝見して楽しませて貰っています。今回「親友と彼と」の最後の佐久間さんのセリフが2D.2D.の配信ライブで泣きながら話していた内容に通じてるなと思い、凄いなぁと感動してコメントしました。続き楽しみにしてます。 (2022年6月17日 1時) (レス) id: d17dbff3aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年6月9日 0時
