妖と共に最後の導きを 4

2つの世界 ページ29

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“体調が回復しないので明日お休みさせていただきます。”



そんなメールをもう上司に入れておいた。そういえば先輩はどうなったのだろうか、なんて職場の事を考える余裕は無い。すぐに阿部くんの事に考えが戻って、また目が水分で覆われる。

そろそろ手を付けなければいけない個人の仕事があったのに、こんな状況でできるわけもなくて断りの連絡をした。でも、ポートフォリオを見てなのか「本宮さんにやっていただきたいのでご都合が空くまで待ってます」なんて言われてしまって。

これも背中を押してくれた阿部くんのおかげなのに、感謝を伝えることも今はできない。


外の空気が吸いたくて申し訳程度にあるベランダに来た。でも立っているのすらしんどくて部屋との境目に腰を下ろして丸くなる。あぁ、神社の縁側で済んだ空気を吸いたい。欲を言えば、阿部くんと並んでお話をしたい。


自分の膝に顔を埋めて、これじゃ外に来た意味が無いのに。考えるのに疲れてそのまま顔を伏せて目を閉じていた。


しばらくして、横に何かの気配を感じた。私もとうとう思いすぎて幻覚？いや無いものの感覚を感じてしまうようになったのか。彼の存在を感じてゆっくり顔を上げた。


「え…」


そこには、私と同じように膝を抱えて隣に座る阿部くんがいた。



「何で……」

「言ったじゃん。俺は空だって飛べるし壁もすり抜けられる。けど入ったのは初めてだよ、さすがに女の子の部屋に勝手に入るのはダメだと思ったし照が結界張ってるからここは安全。俺がいる必要はない。でも今だけ許して」


少し気まずそうに、でも何だか拗ねたように早口で言った彼。そっと私の方を見て、ちょっとムッとする。


「……ふっかに怒られた。だから謝りに来た」

「怒られた…？」

「誤解させんな、あの子泣いてるぞって。でも本当に泣いてるなんて聞いてない」


確かに私は今日ずっと泣いている、落ち着いてもどこかずっと目が潤っていた。目を擦ると確かに拭われた涙が手につく。阿部くんの姿を見て知らないうちにまた泣いていたみたいだ。


「……ごめん。確かに傷つけるような言い方はした。でも嘘じゃない」


いつもより少しぶっきらぼうに。体をぎゅっと小さくしながら彼は言う。今まであまり見たことが無い姿で、私はどう返せばいいのか分からなかった。



「Aちゃんが悪いわけじゃない、俺が勝手に苦しんでるだけ」

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