妖と共に最後の導きを 4

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「今まではこの体さえあれば幽体として妖怪達と一緒に過ごせてた。それが楽しいから幽体として死を選ぶことを踏みとどまれていたんだと思う。あいつらが必死に助けてた事実もあるけど、死にたいと言いつつ行動には出なかった。

でももうこの体にリミットが近づいている、それは阿部ちゃん自身も知ってる。だから最近の阿部ちゃんなら自ら妖怪に向かっていってもおかしくはないと思わない？急に別れることになるなら、自分で区切りをつけて死に向かった方が気持ちの整理がつくだろうし」


「……それは…確かに」

「でも阿部ちゃんはまだ生きてる。何でだと思う？」


ふっかさんは私の顔を覗き込む。あったかくて優しい笑顔だった。



「Aちゃんがね、いてくれたからなんだよ」


既に零れていた涙がさらに溢れた。その意味はまだ分からなかったけど、私はずっと彼に何をしてあげられるのかって考えてたから。でも彼にとっては生きることは苦痛な事で、それがいい事なのかも分からないのが悲しくて。



「Aちゃんの存在が阿部ちゃんを踏み止まらせてた。阿部ちゃんあの子が幸せになるのを見届けたいって言ってた。口にはしてなかったけど、命を絶ってAちゃんと会えなくなることもきっと嫌なんだと思う。阿部ちゃんにとっては苦しいことかもしれない、でも俺や妖怪たちにとっては嬉しいことなんだ。だからAちゃんが阿部ちゃんと一緒に過ごしてくれたこと、俺らは凄い感謝してんの」

「でも…阿部くんはまだ死にたいって…」

「うん、でも阿部ちゃんの中で何かが変わったのは事実だから。死ぬことを踏み止まる新たな理由が生まれただけで大きいことなの」


ずっと握っている手。私と阿部くんの体温で最初よりもさらに温かくなっている。彼はまだ生きている。タイムリミットが近づく中で、私たちにとっては悲しいその決断をしない理由に私がなれている…？


「佐久間が言ってた。人間の幸せが“死”であることは絶対にありえないって」



“その人は…死ぬことが幸せだって、思ってたんじゃないかな”



さっくんがボロボロに泣いているのを見ながら阿部くんが放った言葉。彼自身も思ってる事だったって、昨日の彼の声を思い出して悲しくなる



「幸せは生きている先にある。佐久間が言うんだから間違いない。だから俺は絶対に阿部ちゃんをこの体に戻したい」



ふっかさんが見つめていたのは、阿部くんの手を握る私の手。

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