どうしてここに ページ46
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今日は急に頼まれる仕事はあまりなく、ちりつもで溜まっていた自分のタスクをひたすらに片づけていた。それはやっと伊藤先輩が出社してくれたのもあれば、そもそもの案件量が落ち着いてきたのもある。
昼休みに頑張ろうな…って背中を叩き合った同期と少し目を合わせてよかったねと苦笑い。個人でやってたあの仕事も無事に納品が終わって、先方からの評価も中々に良かった。
もう少しでやっと落ち着けそうかな。少しホッとして、今日こそは神社に行きたいなと思い立った私は気合を入れなおそうと飲み物を買いに席を立った。
「っ…!?」
だけど、その途端に私は息が止まった
「なに、あれ……」
視界に入ったのは不自然に暗く、不気味な雰囲気を漂わせるあの人のデスク付近。パソコンに向かいながら生気のない顔をしている伊藤先輩の背中にへばりつく、明らかに人間ではないものがいた。
「うそ……」
恐怖のあまり走ってオフィスを出た。冷や汗が止まらなくて、さっきの恐ろしい光景が忘れられなくて。今朝先輩を見た時はあんなのいなかった。めちゃくちゃ生気が無い顔はしていたけど先輩の背中には何もいなかった。それでも相変わらず私を鋭い目で睨むのは変わらなかったけど……
おそらく妖怪であるあの姿は私にしか見えていないはずだ。それにその事実が妖怪にバレてしまったらきっと私は襲われてしまう。とても恐ろしくてあそこに戻れやしないけど、まだ就業時間中で。
とりあえずあの場所から離れたくて外に出た。どうしようかと恐怖の中で考えている時に思い出した事
「そうだ…ふっかさん…!」
運よくポケットに入れていた携帯を取り出す。スクロールして彼の名前をタップして
「Aちゃん」
その時だった。私の腕が誰かに捕まれた
「阿部くん……?」
「怪我無い?なにも無かった?」
少し焦った表情で、でも真剣に私を見る。感じていた恐怖が一気に溶けた気がして、その途端に体の力が抜けた。
「怖かった…っ」
「こっちおいで、ちょっと落ち着こう」
彼は私の身体を支えて建物の影に連れて行く。しゃがみこんだ私の背中をさすりながら軽く抱きしめてくれる彼の服を掴んで、安心感を求めて縋った。
「あれ、ずっと言ってた先輩だよね?」
「うん…久しぶりに会社来てて…でも朝はあんなのいなかった……」
「あの人と話したりしてない?」
「ううん…今日はまだ…」
「ん、そっか。よかった」
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ぽぷら(プロフ) - まいさん» ぜひこれからもお読みいただければ!嬉しいご報告ありがとうございました!🙌 (2022年6月8日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます!ゴーストさんもお読みくださったんですね、とっても嬉しいです!ファンタジー作品が多めなので、どれかを見つけて気に入って下さった方はもしかしたら他にもお口に合うものがあるかもしれません☺️ (2022年6月8日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - むったんさん» コメントありがとうございます!お返し遅くなってしまいすみません。次回更新で移行になりますので、是非そちらでも楽しんでいただけたらなと思います☺️ (2022年6月8日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - いてとても驚きました笑これからも素敵なファンタジー作品を楽しみにしています いつも素敵な物語をありがとうございます (2022年5月27日 1時) (レス) id: 3478eff812 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - コメント失礼します以前作者様が書いていたハーフゴーストが大好きで、この作品、ハーフゴーストどちらもたまたま検索欄から見つけ夢中になっていました。そこでハーフゴーストを読み返していてこの作者様は他にどんなものを書いているのかなと見ていたらこの妖を書いて (2022年5月27日 1時) (レス) id: 3478eff812 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2022年5月16日 0時