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「足りない？」
「足りない」
「ふふ、そっか」
彼の肩に寄りかかり、俯いたまま。まだ離れるもんかってその体勢を崩さない。家に帰れば、また仕事に行けば。私は一人で色々な事に耐えなきゃいけないんだから。
「あのおっさん、どう？」
「多分あの人も仕事でそれどころじゃない」
「そっか、いいのか悪いのか」
「でも色目では見てくる」
「まじー？てかあの人指輪してなかった？」
「そう、ありえない。その人に対して色目使う先輩もありえない」
「ほんと、こんな可愛い子巻き込まないでほしいよ」
肩に回っていた手はとんとんと心地よく動く。もちろん指輪なんかしてないし、気持ち悪さなんてものはない。きっとお昼に同期が言ってたことはこういうことで、家に帰って毎日こうしてくれる人がいたらどれだけ気持ちが落ち着くだろうか。
「いいなぁ…」
「ん？何が？」
「……ううん」
ぼそっと出てしまったその言葉。私だって疲れた時には毎日こうしてもらいたい。こんな状況をお互いに良しとしているぐらいだからほんの少しは期待していいのかもしれないけれど、ただ彼はきっと何かを抱えていて。私と関係を深めるにはそれが壁となっている気がした。
うすーい壁が、私と彼の間にはある。
「……帰らなきゃ」
「もう？」
「うん、やらなきゃいけないことが残ってる」
「…順調？」
「明日中に納品なの。でも仕事が立て込んでて明日いつ帰れるか分からないから…今日中に仕上げて明日会社行く前に投げる」
身体を起こして彼から離れた。まだまだ足りないくらいだけど、少しでも甘えられたから。早く落ち着かせて、彼が消えないうちに…いや、彼が消えないようにそばにいる時間を増やしたい。
「じゃあ明日一旦落ち着く？」
「まぁ…でも依頼がもう一件来てたから少しだけ休んだらそっち取りかかろうかなって。仕事次第ではあるんだけど」
ありがたいことにまたお話を頂いた。今回より利益が出そうな案件だった。
「…甘えに来なよ。俺も甘やかす準備しとくから」
「本当？」
「うん、待ってる」
待ってる
その言葉に安心した。彼は、少なくとも次に会うまでは待っててくれる。消えたりしない。それだけで少し頑張れる気がした。
「約束ね」
「うん」
「絶対ね」
「うん」
今日の私は我儘だ。絶対ねって、彼に向かって目線を投げた。
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ぽぷら(プロフ) - まいさん» ぜひこれからもお読みいただければ！嬉しいご報告ありがとうございました！🙌 (2022年6月8日 22時) (
レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます！ゴーストさんもお読みくださったんですね、とっても嬉しいです！ファンタジー作品が多めなので、どれかを見つけて気に入って下さった方はもしかしたら他にもお口に合うものがあるかもしれません☺️ (2022年6月8日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - むったんさん» コメントありがとうございます！お返し遅くなってしまいすみません。次回更新で移行になりますので、是非そちらでも楽しんでいただけたらなと思います☺️ (2022年6月8日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - いてとても驚きました笑これからも素敵なファンタジー作品を楽しみにしています いつも素敵な物語をありがとうございます (2022年5月27日 1時) (レス) id: 3478eff812 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - コメント失礼します以前作者様が書いていたハーフゴーストが大好きで、この作品、ハーフゴーストどちらもたまたま検索欄から見つけ夢中になっていました。そこでハーフゴーストを読み返していてこの作者様は他にどんなものを書いているのかなと見ていたらこの妖を書いて (2022年5月27日 1時) (レス) id: 3478eff812 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年5月16日 0時
