幸せが悲しみに ページ26
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「佐久間の手握ってあげて」
立ち尽くしていた私に声をかけた阿部くん。さっくんがこんな状況なのに、やけに冷静で手馴れていて。言われた通り布団の中で震えているさっくんの手を握ってあげると涙が止まらない目で私を見つめてから弱弱しい力で握り返した。
「佐久間が力をかけた人が亡くなったんだよ」
「亡くなった…？」
「その人が幸せになる前に何らかの原因で命を失ってしまった。幸せになるための力なのに、その力が行き場を失ってしまって佐久間のところに悲しみとして戻ってきちゃうんだって。佐久間にしか分からないだろうけど…耐えられないくらいに悲しくて辛いはずだってふっかが言ってた」
さっくんはひたすらに体を震わせて声にならない声で泣いている。顔のあたりの布団はもう涙でびしょびしょで、見ているだけで辛い気持ちになってしまうほど。
「それって…良く起こることなの？」
「ううん、めったに起こらない。俺も見るのは2回目だし、ふっかも俺と一緒に見たのが初めてって言ってたから……」
幸せになってほしいって思ってお家に行ったはずなのに、それが悲しみとして戻ってきてしまうなんて。なんて残酷な事なんだろう。さっくんの涙がそれを物語っていて、いつも元気でニコニコしてる姿の欠片もない。
「幸せに…なるはずなのに？」
「……俺も詳しくは分からないけど」
さっくんを見つめる阿部くんの表情もまた切なくて悲しくて。2人は妖怪と人間だということを忘れるくらいに仲が良くて、よく一緒にいて。さっくんも阿部くんが大好きだって様子を見ていれば分かる。
「その人は…死ぬことが幸せだって、思ってたんじゃないかな」
死ぬなって阿部くんに向かって叫ぶ姿、私に死んじゃだめって訴える姿。それを思い出した私はさっくんが“死”に対して物凄く敏感な理由が分かった気がした。
「……そんなの辛すぎるよ」
死ぬことが幸せだなんて、そんなのあってほしくない。そんなのさっくんが許すわけがない。
「そんなわけないって……」
私だって考えられない。命を失う事が幸せだなんて。
「あ…ふっか」
「悪い、遅くなって。さくまー」
障子が開いたと思ったらふっかさんが帰ってきたようだ。その後ろから康二くんと照くんが顔を覗かせて、ふっかさんと一緒に心配そうにこちらに歩いてくる。ふっかさんは私がさっくんの手を握っているのを見てありがと、と笑いかけた。
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ぽぷら(プロフ) - まいさん» ぜひこれからもお読みいただければ！嬉しいご報告ありがとうございました！🙌 (2022年6月8日 22時) (
レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます！ゴーストさんもお読みくださったんですね、とっても嬉しいです！ファンタジー作品が多めなので、どれかを見つけて気に入って下さった方はもしかしたら他にもお口に合うものがあるかもしれません☺️ (2022年6月8日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - むったんさん» コメントありがとうございます！お返し遅くなってしまいすみません。次回更新で移行になりますので、是非そちらでも楽しんでいただけたらなと思います☺️ (2022年6月8日 22時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - いてとても驚きました笑これからも素敵なファンタジー作品を楽しみにしています いつも素敵な物語をありがとうございます (2022年5月27日 1時) (レス) id: 3478eff812 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - コメント失礼します以前作者様が書いていたハーフゴーストが大好きで、この作品、ハーフゴーストどちらもたまたま検索欄から見つけ夢中になっていました。そこでハーフゴーストを読み返していてこの作者様は他にどんなものを書いているのかなと見ていたらこの妖を書いて (2022年5月27日 1時) (レス) id: 3478eff812 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年5月16日 0時
