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 「言ったでしょう?病院で確認が済んだら、すぐ捜査に戻りますから。…それより今は、佐藤さんのほうが心配です。」





 昨日からずっと、佐藤さんと目があっていない。





 まっすぐ目を見てくれる彼女が、何かでいっぱいいっぱいになってるときの悪い癖。





 「江戸川くんならきっと、佐藤さんも話してくれると思うんです。」





 「……えっと、僕まだ小学生だよ?それに、今虎褪刑事を一人にしたら、また狙われちゃうかも。」





 犯人の狙いはまだわかってないんでしょう?と苦笑いを浮かべる彼の瞳の奥は、何かを見据えているように見えた。





 「……お願いできませんか?」





 「……わかった。さっきも言ったけど、無茶しないでね。」





 納得はできないけど了解はした。という顔をした彼を見送って、駐車場にあるパトカーにのりこむ。





 木っ端微塵になった愛車は粗大ゴミと化し、気を利かせてくれた宮本さんが鍵を貸してくれた。





 パトカーが代車替わりになるのいいな、刑事って。今後は車検の代車パトカーにしてもらおうかな。やっぱり持つべきものは優しい同僚だなと確信しつつ、車を発進させる。





 いつも鼻を掠める煙草の匂いはしなかった。





 かわりに、病院に入れば薬品の独特な匂いが、ツンと刺激を与えた。





 お医者様の話を聞けば、昨日より呼吸も安定して、あと数日すれば目が覚めるという。





 ベットで眠る松田さんの顔は、いつもより幼く見えて、あの綺麗な青眼は伏せられたままだった。





 私はどうすることも出来ず、昨日と同じようにただ立ち尽くしている。





 「……必ず、犯人捕まえますから。……早く目覚ましてくださいね。」





 少し言い淀んで、口を閉じたら開いたりを繰り返し、息を呑む。吐き出すようにして、言葉を紡ぐ。





 「…佐藤さんが、キレる前に。」





 私が、と言えなかったのは、3年間二人が並ぶ姿を見続けてきたからだと、そう自分に言い聞かせて病室をでた。

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作者名:づきづき | 作成日時:2023年4月8日 12時

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