▼ラズベリーとクレソンのキッシュ 巴日和 ※あかりさんリクエスト ページ1
僕は、容姿に恵まれていると思う。そのおかげでアイドルとしての商品価値があって、有難いことに必要とされている。美しさに惹かれて、女性は嫌という程集まってくるし、随分と褒めそやされたものだ。
甘い顔をすれば、簡単に堕とせる事を知っている。
笑っていれば、好きでいて貰える事を知っている。
だからこそ、僕の内面を知り尽くして尚、好いてくれる君の愛情は、確固たる安定したものだと信じられるんだ。
▽△▽
午後3時、彼女がいつも庭先に出ている時間。
真白なガーデンテラス。彼女専用のガーデンテーブルと、アンティーク調のサロンチェア。テラスもテーブルも白いのに、彼女の座る椅子だけは真っ黒。部屋にあるお気に入りの椅子を持ってテラスへ向かうから、外のインテリアと合わないのは当然ではあるのだけれど。それを理解していても、やっぱり遠くから眺めると、何処か歪に思えた。
「Aちゃん!僕のライブはどうだった?」
『貴方、急に押し掛けてきてどういうつもりなの』
少し上向きにつり上がった彼女の黒い瞳が、不満ですと言わんばかりに此方を見上げる。然し彼女の敷地に入る事への了承は、とうの昔に彼女の両親から取ってあるので、例え睨まれようと何も問題は無い。むしろ僕の家とも同義なのだ。自由に出入りできる僕の特権である。
彼女の好みにぴったり合った、オーダーメイドのティーセット。黒を基調としたその美しい陶器は、金と銀が入り交じった細かな装飾で彩られている。紅茶を嗜むのに黒いカップだなんて。と、当初は彼女の可笑しな嗜好に首を傾げていたが、今では慣れたものだ。…否、黒色を好む彼女に慣れさせられたと言うべきか。
何故なら、僕はティーカップは白色だと決めているのだ。その方が、茶葉の種類によって変化する紅茶の色味を、存分に楽しむ事が出来るからである。オレンジ色に透き通っていたり、琥珀色に溶けていたり。じわりと滲む鮮紅色であったり。香りを楽しんだり風味を味わったりするのも紅茶の素晴らしいところだけれど、美しい色合いを眺めるのも酔狂なものだと思うのだ。
「それにしても…、君は物好きだね」
黒いカップだなんて、紅茶の色は全て深紅色だ。まるで血を飲んでいるみたいな気分になってしまうから、此方としては辞めて欲しいのだけれも。
まぁ、小さい頃から何度言っても聞かないのだから、今更僕にどうこう出来る問題ではないのだろうね。
それくらい、僕の許嫁の彼女は強情で、我儘で、特別で、とてもとても、美しい。
▼ラズベリーとクレソンのキッシュ 巴日和 ※あかりさんリクエスト→
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素敵帽子(プロフ) - 金平糖さん» 素敵なお話だなんて…ありがとうございます。忍くんとのお出かけでリクエスト承りました!金平糖さんの理想通りに書けるかは分かりませんが、精一杯頑張りたいと思います!体調の心配までお気遣いありがとうございます! (2020年9月6日 12時) (レス) id: 3919641d26 (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - なつさん» リクエストどうもありがとうございます!此方としてはどんどん我儘を言ってくださる方が全然ありがたいです!!幼馴染シチュは憧れですよね…!精一杯書かせていただきます。 (2020年9月6日 12時) (レス) id: 3919641d26 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖(プロフ) - 素敵なお話ばかりで次のお話が楽しみで仕方がないです!リクエストをお願いしたいのですが、忍くんとお出かけをするお話を書いていただきたいです。難しければ、全然お話を変えていただいて構いません!お身体に気をつけ、作者様のペースで頑張ってください。 (2020年9月4日 2時) (レス) id: 780cc2d226 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 前作から読ませて頂いています。とても素敵な作品です!あの、敬人を書いていただきたいです!夢主ちゃんと敬人は幼馴染っていう設定で…。わがまますみません! (2020年8月20日 3時) (レス) id: ac5ebdda5f (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - 愛那さん» 承知致しました!精一杯書かせていただきます!シチュエーションなどご希望ありましたら遠慮なくおっしゃってください! (2020年8月15日 12時) (レス) id: 3919641d26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:素敵帽子 | 作成日時:2020年6月22日 20時