▼兎も立派に噛み付ける 仁兎なずな ページ28
ぴょんぴょん、と跳ねる君が可愛くて。
私に向ける、その100%のにっこり笑顔が可愛くて。
身長の事を少し揶揄えば、不満げに頬を膨らませるのもとっても可愛い。
そんな私の可愛い
君の頭を撫でるのが私の習慣になっていたけれど。
……どうやら君はお気に召さなかったみたい。
▽△▽
教室の扉が開いた。
入口からひょっこり覗いた黄檗色のアシンメトリーが、ふわりと揺れるのを見る。星空でも閉じ込めたようなきらきらの瞳が、きょろきょろと誰かを探すように動いた。前を見て、後ろを見て、訝しげに教室全体を見回している。小さい身長を一生懸命伸ばして、視線を交錯させて。そんな彼が私の方を向いた瞬間、花が咲いた笑顔になった。目と目を合わせて、心底嬉しそうに砕けたその笑顔が、とても。とても。
…可愛い。
「何隠れてるんだよ。 おかげでちょっと探しちゃっただろっ」
笑っていたかと思えば、お次は烈火の如く怒り出した彼の表情の豊かさが愛おしくて堪らない。ぷく、と頬を膨らまして。その様子は野山を駆け回る、頬袋の大きいあの小動物か。ちっちゃくって、凄く癒される。私より背の低い彼がこうやって怒るのが、可愛くって好き。怒ったら普通不細工になる筈なのに、可笑しいことに彼はずっと可愛いのだ。
『なずなは本当に可愛いなぁ…!』
ごめんごめんと意味もまるでこもってないような形だけの謝罪をして、その黄檗色の頭を撫でる。あぁ、彼氏の頭が撫でやすい位置にあるなんて最高。もしなずながもう少し背が高ければこんな事なんて出来ないもの。可愛い子を好きな時に撫でられないなんて、そんなの嫌。
可愛いものは愛でたくなるの。大切に大切に、蕩けそうに触れて。慈しみたい。 抱きしめて、頬ずりしたい。可愛いものが大好き。可愛い子が大好き。だってずっときらきら輝いてて、眩しいから。私自身可愛いものが似合わないから、そんな“可愛い”ってすごく特別。
「な……っ! いっ、いつも言ってるらろ! 俺は“可愛い”より“かっこいい”って思われたいんら!」
愛しさのあまり抱きしめた腕の中で、なずなが慌てたように暴れ出す。離せ離せと駄々をこねる子供みたいで、その姿すら可愛いと思った。でも残念だけど、そんな風に子うさぎがぷうぷう鳴いたって、何にも怖くない。私を威嚇して諭しているつもりのようだけれど、見た目が可愛いせいで背筋が震えるような威厳も何もない。
ごめんね、吃驚さえも出来ないの。
空回り続ける愛しい彼が、やっぱり可愛くって。
自然に笑みが零れた。
▼兎も立派に噛み付ける 仁兎なずな→←△作者より ※追記あり 2/21 ※ 出来れば読んで欲しいです
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春永詩帆(プロフ) - 最高です、素晴らしい作品をありがとうございます。 (2021年12月31日 23時) (レス) @page28 id: 46695abdda (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - 藍原春陽さん» 申し訳ありません!只今修正致しました。不甲斐なくもたった今気付きました……。ご指摘ありがとうございます! (2020年11月28日 23時) (レス) id: 9398c4b575 (このIDを非表示/違反報告)
藍原春陽(プロフ) - 全部の話がきらきらしていてとても好きです。ひとつだけ、本文中で凪砂が凪紗になっていることが気になりました。できれば訂正お願いします。これからも頑張ってください。 (2020年11月28日 0時) (レス) id: b2c9d88620 (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - のんさん» ありがとうございます!嬉しいです (2020年8月15日 12時) (レス) id: 3919641d26 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 応援してます (2020年5月30日 1時) (レス) id: b1f19877ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:素敵帽子 | 作成日時:2019年8月18日 12時