▼片想い→←片想い 青葉つむぎ ページ24
例えば本に目を落とすその長い睫毛、とか。
雨の日はさらに爆発してるそのふわふわした長めの髪、とか。
夢中で文字を追う優しい瞳、とか。
ねぇ。 全部大好きなの。
……君は気付いていないけどね。
▽△▽
放課後、図書室は彼の時間。彼が本を読む時間。 彼が本に触れる時間。______私が彼を、盗み見る時間。
埃っぽくて、古い紙の匂いがして。
図書室は特別居心地の良い場所ではないけれど。
彼を眺めるには絶好の場所で、最近の私のお気に入りスポットになりつつある。本を読むべきである場所の図書室で、文字を眺めているだけで心は彼にあるのは可笑しい話だとは思うが。それでも大好きな彼をずっと眺めていたくて。本が好きな訳でも無いのに、今日もまた性懲りも無く
『つむぎ。おすすめの本は何?』
「あぁ、Aちゃん。今日も来てくれたんですね!」
ぱぁ、と花が咲いたように笑うつむぎ。私が来て嬉しいのか、寂しい図書室が少しでも人の声に溢れて嬉しいのか、それは分からないけれど。こうやって、来たことを歓迎されるのは純粋に嬉しい。別に好いてくれてなくったって、私が来たことで彼が笑うのに悪い気分はしなかった。
「今日は……これなんてどうでしょう」
『これは?』
明治時代の作家が書いた文学ですよ。…と、ほろりと溶けそうに笑って彼は言った。明治時代の…なんて、私には少々難しいような気もするのだけど。にこにこの、その悪意ゼロスマイルは果たして本物か否か。ふーん、と当たり障りのない反応を示す私に、つむぎが慌てたように手を振る。
「あっ、えっと。難しそうであれば、もっと簡単に読めるものを選んできますよ?」
ぶんぶん。ふわふわ。
忙しく動く腕と、ゆったり揺れる髪。ほら見ろ私。やっぱり此奴は私を馬鹿にしてる。“もっと簡単なもの”だってさ。彼はどれだけ私を子供だと思っているんだか。 一応同い年なんだけどな。
____まぁ今更な話だから、別段気にしないけど。
『いや、いいよ。有難く読ませてもらうね』
つむぎがせっかく選んだ本を押し返す筈も無く、にこっと大人がするみたいに薄く微笑んで、本を受け取った。もうすっかり私専用の席になったいつもの椅子に腰掛けて、本を開いて読む振りをして彼を見つめる。
カウンターの向こうの司書席。伏せられた長い睫毛に、見慣れた筈なのに胸が跳ねる。カウンター越しの、右斜め横の表情。最高にかっこよくて、綺麗。文字を追うために、目がきょときょと動くのも可愛くって。
あぁ、大好きだなあ。
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春永詩帆(プロフ) - 最高です、素晴らしい作品をありがとうございます。 (2021年12月31日 23時) (レス) @page28 id: 46695abdda (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - 藍原春陽さん» 申し訳ありません!只今修正致しました。不甲斐なくもたった今気付きました……。ご指摘ありがとうございます! (2020年11月28日 23時) (レス) id: 9398c4b575 (このIDを非表示/違反報告)
藍原春陽(プロフ) - 全部の話がきらきらしていてとても好きです。ひとつだけ、本文中で凪砂が凪紗になっていることが気になりました。できれば訂正お願いします。これからも頑張ってください。 (2020年11月28日 0時) (レス) id: b2c9d88620 (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - のんさん» ありがとうございます!嬉しいです (2020年8月15日 12時) (レス) id: 3919641d26 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 応援してます (2020年5月30日 1時) (レス) id: b1f19877ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:素敵帽子 | 作成日時:2019年8月18日 12時