▼君を姫にしてやらない 月永レオ ページ21
初めて会った時､一目で君は天才なんだと思った｡
目を引く整った容姿｡有り余る才能｡
このおれでさえ､目を見張るくらい凄い奴｡
普段の君は何ともまあ小憎たらしいものだけど｡
ヴァイオリンを優美に奏でるその姿だけは､鮮烈で美しいと感じてるんだ｡
▽△▽
｢おいお前､今また勝手に曲調変えたろ！この曲の此処はこんなに元気で溌剌として無いぞ｣
『知ったことか｡私的には前のよりこっちの方が気持ちが良い』
屋上｡フェンスの近く｡
おれと彼女は“いつもの場所”に居た｡おれの一番インスピレーションが湧いてくる場所｡彼女が一番自由にヴァイオリンを弾ける場所｡絶え間なく流れる雲と､忙しい学園内のどの時間にも属さない気ままな居場所｡居心地が良くて､心が休まる｡
そんな､おれと彼女の定位置｡
青空を背負った黒髪の少女は､今日も今日とておれの隣でヴァイオリンを奏でる｡おれのインスピレーションが詰まった最高傑作達を､時折勝手に弾いたりしながら｡別にそれは何の問題も無い｡このおれの曲を弾きたいって思うのは至極当然の事だと思うし､彼女が弾きたいと思ってくれるくらいにおれの曲は凄いって再確認出来るから｡勝手に弾いてくれること自体にとやかく言うつもりは無くて､寧ろ鼻高々な気分が四六時中味わえるから構わない｡
＿＿＿＿＿＿＿そう｡それだけなら｡
『何で此処でこんなに悲しそうな音符の羅列になるんだ？前の繋がりからガラッと変えてみた方がもっと綺麗で､もっと楽しい』
｢Aの意見なんて聞いてない！おれが降りてきたインスピレーションのままに作曲して､これが一番綺麗だと思ったんだから！｣
何と彼女､弾くだけでは飽き足らずに､俺の作曲した曲にまで手を入れてくる始末で｡何ともまあ､図々しくて強かな女だろう｡“意見を出してくる”よりも早く自分の中で作り替えてしまうのだから全く困ったものだ｡此方の落っこちた最悪の気分なんて露知らず､相も変わらず綺麗な音色で､彼女はおれの作った曲(編曲者は彼女)を奏でる｡
これの何が一番気に食わないったら､彼女が取っかえた方の旋律に思わず聞き惚れてしまうと言うおれの感性なワケで｡澄み渡るような深い音色が織り成すそのフレーズに､うっとりと目を閉じてしまうおれ自身に一番嫌気がさしているのだ｡
｢あぁ！腹立つ！！｣
でもだからって､“もういやになっちゃったから屋上に行かない”なんて考える余地が無いところが､惚れた弱みというやつなんだろう｡
▼君を姫にしてやらない 月永レオ→←▼私と貴方の楔 乱凪砂 ※みな様リクエスト
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春永詩帆(プロフ) - 最高です、素晴らしい作品をありがとうございます。 (2021年12月31日 23時) (
レス) @page28 id: 46695abdda (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - 藍原春陽さん» 申し訳ありません！只今修正致しました。不甲斐なくもたった今気付きました……。ご指摘ありがとうございます！ (2020年11月28日 23時) (レス) id: 9398c4b575 (このIDを非表示/違反報告)
藍原春陽(プロフ) - 全部の話がきらきらしていてとても好きです。ひとつだけ、本文中で凪砂が凪紗になっていることが気になりました。できれば訂正お願いします。これからも頑張ってください。 (2020年11月28日 0時) (レス) id: b2c9d88620 (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - のんさん» ありがとうございます！嬉しいです (2020年8月15日 12時) (レス) id: 3919641d26 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 応援してます (2020年5月30日 1時) (レス) id: b1f19877ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：素敵帽子 | 作成日時：2019年8月18日 12時
