▼きっとこの恋は触れたら火傷してしまう 守沢千秋 ページ2
こんなにも体格差があると、改めて確認させられたみたいで胸がぎゅんぎゅん苦しかった。
「はっはっはっ、お前は可愛いな?顔も…、耳まで真っ赤だぞ」
『………ッ!?』
いつもでかい声で人の名を呼んで、うるさくて仕方ない守沢。明るくて、キラキラした声。どこまでも澄んでいて、あったかい。なのに、さっき耳元で囁くように響いた声は、普段の守沢からは想像もつかないくらいに、甘くて、艶美な声だった。
「こらこら暴れるな。Aの力では俺には勝てないだろう…」
『…ゃ、う………っ!?』
守沢の静かで、甘やかな声が鼓膜を震わす。吐息混じりの熱い、声。知らない。
私は、こんなの、知らない。
守沢の声が耳から入って、頭の中で反響する。息を吸う音、唇の動き、紡がれる言葉が、全部全部ダイレクトに伝わって、背中がぞくりと震えた。生理的に出たのか、涙で視界が揺らぐ。足の力も抜けて、立っていられなくて、守沢に寄りかかるようになってしまう。無意識に守沢のシャツを掴んで、必死にがくがくする足を踏ん張った。
『も、う分かった……っ、から…離せ…!』
満足しただろ、と歪む視界の中で守沢を睨めば、思ったよりも顔が近くて。守沢の綺麗な顔が目の前にあって、思わず腰が引けてしまう。…まぁ、そんなことをこいつは許してくれるはずなくて、逃がさないとばかりにぐっと引き寄せられた。
「普段の俺ならば、お前の願いを叶えるために尽力しただろう。……だが、すまないな。今回ばかりは無理だ。」
顎を持ち上げられて、唇が合わさる。ちゅ、ちゅ、と絶え間なく降り注ぐキスに、息が出来なくなる。 触れた唇が燃えるよう。
混ざりあう吐息が、幸せだと思った。
誰もいないとはいえ、朝の教室で。
こんなことをしている。
守沢と、口付けを、交わしている。
合わさった唇から想いが伝わってくるようで。それほどまでに、守沢との口付けは甘い。甘くて甘くて、これほど甘いものは無いんじゃないかっていうくらい。
好きだと思った。守沢が好きだ、と思った。守沢の背中に手を回して、抱きしめ返す。今まで何回も抱きしめられてきたけれど、抱きしめ返したのは、これが初めてだった。ろくに入ってない力で、シャツを掴む手を強める。
「…っは、ぁ…A、好きだ……!」
守沢の熱っぽい瞳が、私に向けられる。あんなに離れて欲しかったのが嘘みたいに、止められたキスがもっと欲しくて、もっと触れて欲しくて。
返事の代わりに、自分から唇を重ねた。
この恋に触れてしまえば、焼け焦げて。
もう戻ることは出来ないんだろう。
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春永詩帆(プロフ) - 最高です、素晴らしい作品をありがとうございます。 (2021年12月31日 23時) (レス) @page28 id: 46695abdda (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - 藍原春陽さん» 申し訳ありません!只今修正致しました。不甲斐なくもたった今気付きました……。ご指摘ありがとうございます! (2020年11月28日 23時) (レス) id: 9398c4b575 (このIDを非表示/違反報告)
藍原春陽(プロフ) - 全部の話がきらきらしていてとても好きです。ひとつだけ、本文中で凪砂が凪紗になっていることが気になりました。できれば訂正お願いします。これからも頑張ってください。 (2020年11月28日 0時) (レス) id: b2c9d88620 (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - のんさん» ありがとうございます!嬉しいです (2020年8月15日 12時) (レス) id: 3919641d26 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 応援してます (2020年5月30日 1時) (レス) id: b1f19877ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:素敵帽子 | 作成日時:2019年8月18日 12時