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「ごめんね、散らかってるけど。水とってくるから上がってて。」
部屋に上がって冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、部屋を見渡した。
いつももっと汚いけど今日はマシか……
とりあえず終電までに彼女が少しでも休めたらいいか、と寝室にあったタオルケットをリビングに持ってくる。
……なかなか上がってこないな。
玄関の方を覗くと彼女は壁によりかかって座り込んでいた。
「Aさん?」
声をかけると一瞬ビクッとして潤んだ目で見つめられた。
これはもしかして、変なことすると思われてる?怯えられてる?
「あの、斎藤さん、さすがに、私上がれないです……。」
「.......どうして?」
急に不安になり思わず聞いてしまった。聞いてどうする。
彼女からの拒絶を聞いてしまったら明日からどうしたらいいか分からないし。
「彼氏、がいたりする?」
まずここが問題。彼氏がいたらまずこんなの迷惑な事だ。そもそも家に連れてきたことが間違いだったかな。
次の返答に恐れていると彼女は目を涙で滲ませた。
「そうじゃなくて、私こんな状態で斎藤さんが好きだって言いたくなくて、出来たらちゃんとした時に、」
"斎藤さんが好き"
焦りながらも必死に答えてくれる彼女。手元にはぽたぽた涙が落ち始めて彼女の白くて細い指が濡れていく。それさえ急に愛しく感じた。
下を向いてしまった彼女の顔をあげ、思わず唇を重ねた。自分の指を彼女の指の間に滑り込ませ、強く握りしめる。
唇を離すと彼女は目を大きく開けて驚いている。その仕草さえ可愛く見えてしまい思わずふふ、と息を漏らして笑ってしまう。
「明日になったら忘れてるとかやめてね。
ずっと好きだったんだ。Aさんは多分俺がよからぬ事をすると思ってるかもしれないけど。」
キスするつもりもなかったんだけどなぁ、と呟くと彼女はまた大粒の涙を零す。
彼女の体を引き寄せて抱きしめると、そのまま体を俺に預けてくれた。
と、思ったら呼吸が一定になっている。
「え、Aさん?ちょっと、」
やっぱり。
彼女は目を閉じて寝てしまっていた。
「うっそだろ……この一瞬で。」
また思わずふっ、と口元を緩めてしまう。非力ながらも彼女を抱えてリビングのソファに運んでタオルケットをかけた。
「……明日、ほんとに彼女が覚えてなかったらどうしよう。」
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天然タラシな斎藤さん。
恋愛に対してどこまで好きな子に積極的なんだろう。
本日のデレは終了致しました→←今ではもう、好きだらけ【S目線】
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裕(プロフ) - 夕凪さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいお言葉に励まされました。夕凪様の小説も読ませて頂きたいと思います。そして続編、少しずつですが書いていこうと思いますのでまたよろしくお願いします。 (2020年4月8日 18時) (レス) id: af8940d8bd (このIDを非表示/違反報告)
夕凪(プロフ) - はじめまして、こんにちは。小説通して、とても楽しませて頂きました。わたしも勝手ながら夢小説を書いているのですが、情景・心理描写など参考になる部分が多々ありました。ひとときの夢をありがとうございます。もし可能でしたら…続きを楽しみにしています。 (2020年4月8日 14時) (レス) id: e6f9b067c6 (このIDを非表示/違反報告)
裕(プロフ) - 零さん» コメントありがとうございます!私の中の斎藤さんイメージで書いているので自身は楽しく書かせていただいております。楽しんで頂けてとても嬉しいです。これからも頑張ります! (2020年4月2日 20時) (レス) id: af8940d8bd (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - 第一話から拝見させて頂いてます。色っぽくてドキドキする展開にいつもときめいており、更新されてるとわくわくしながら読んでいる自分がいます。これからも応援させて頂きます、頑張ってください! (2020年4月2日 19時) (レス) id: e30a93ed77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:裕 悠 | 作成日時:2020年3月27日 11時