無色の枷 (ページ4)

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遠くから誰かの歌う歌が聴こえてくる。
これは……クリスマスソングだろうか。
先ほどツリーの側でも聴いた気がする。

「……ふーんふんふふ…ふんふんふーん……♪ …ふーんふんふふ…ふんふんふーん……♪」

うろ覚えなのか無限にループされているサビが聴き取れると、ようやく女は意識が戻ってきたことを自覚する。
自分はそうだ……何者かに襲われて気を失っていたんだ。

「……ぅ……ここ…は…………」

「…あ、起きたァ？」

目を開けると、女の目の前には先程知り合った男が座っていた。
ニタニタとこちらを見つめる男の姿に、彼女は身の毛がよだつのを感じる。

「ここ…どこ……貴方、さっきのお兄さん…だよね……？」

「うん、そうだよ。…ここは僕の家。君は今日から僕と一緒にここでず〜っと暮らすんだ。」

「……は？」

その時、女は自由の利かない自身の身体に気が付いた。
どうやら眠っている間に、彼女の手足には枷がつけられていたようだ。

「…なにこれ。取れないんだけど」

「君が逃げないように手錠とか付けさせてもらっちゃった」

「ふざけないでよ。今すぐ外して」

「フフ…外すわけないでしょ。君、今の立場わかってるの……？」

女は身体を起こし周りを見渡す。
ここはリビング…だろうか。
散らかっていて部屋の惨状は酷いが、その中でも比較的綺麗なソファに、女は自由を奪われ座っていた。

「ドッキリ……」

「……」

「…じゃないよね、その目は。……なに？私誘拐されたの？」

「フフ…そうだよ。僕が連れてきたんだァ、Aちゃん」

突然名前を呼ばれ、女…基Aはビクリと肩を震わせる。

「！…何で名前」

「君の財布から免許証とか見させてもらった。誕生日も覚えたんだよ……あっ、そうそう。歳は僕の二個下だったんだねェ」

「……」

Aはドン引きしながらも、強気な目で男を睨みつけた。

「……いい歳して誘拐なんてバカみたい。だいたい目的はなに」

「君が言ったんじゃないか。幸せになれって」

そう言うと男は、取り上げたはずのガスボンベを持って見せた。

「僕は今日、他人の幸せを踏み躙ることでこのクリスマスを生き抜こうと思ってたんだ。…でも君に邪魔をされた」

「……」

「…それってさァ、もう、君が責任持って僕を幸せにしてくれるしかないよね」