xxiii ページ23
──────……
次の日。
Aは早速料理をしようとキッチンに立っていた。
「……」
「…あの、A?」
「ん?」
「何読んでるの…?」
「漫画」
「…ですよね」
Aの手に持っているものは料理漫画だ。
参考資料がまさかのそこだったことに若干驚きつつも、影汰は静かに見守りだす。
「よし、とりあえず玉ねぎを切って……ゔ…目沁みる」
「…大丈夫?」
「…大丈夫。……次に、鶏肉…は頼むの忘れたから、ウインナー代わりに切って………炒める」
「……」
「ご飯も入れて、ケチャップも……あ、ケチャップ入れすぎた…ま、いっか」
「……」
「じゃあ卵割って……あ、殻入っ………うん、セーフ。混ぜて…焼いて……ひっくり……返すのむずいな。…あれっ」
「……」
そこでAは影汰を見た。
「向こうで待ってて」
「…あ、うん」
Aに言われリビングに戻ってきた影汰は、静かにキッチンの方を見つめながら思う。
あの覚束無い手つき、普段料理しない自分から見てもわかる…
「…それでも、一生懸命作ってくれるなんて」
「……はい、出来た!お待たせ!」
「!」
Aは二つの皿を持ってくるとテーブルに並べた。
完成したのはオムライスだ。
卵の上にはニコちゃんマークが描かれていた。
「可愛い…」
「いや〜我ながらニコちゃん
「ニコちゃん
「料理は……ほら、味で勝負だから」
そう言うとAはいただきます!と言ってオムライスを頬張りだした。
影汰も続けて、いただきますとスプーンに手を伸ばす。
「ん!…ん?……うーん。……なんていうか、ご飯ベチャッてなってて卵も固くて、微妙…かも」
「そう?全然美味しいよ」
「嘘だぁ。お世辞はいいよ。…料理下手って思ったでしょ」
「まぁ、苦手なのかな?とは思ったけど…でも、一生懸命作ってくれたことが何より嬉しいし、味についてもお世辞じゃなく、本当に美味しいって思ったよ」
あまりに真っ直ぐに目を見つめてそう言われるので、Aは思わず目を逸らした。
「…そう」
「うん。だからまた作って。僕、君の作るご飯も好き」
「…まあ、別にいいけど」
そう言って静かに喜んだ表情を見せたAを、影汰は愛おしそうに見つめながらオムライスを頬張った。
終わり←xxii
29人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さく - すごい面白いです!!!! 更新頑張ってくださいね、ずっと待っていますから (2022年1月19日 18時) (レス) @page23 id: dc6ef9e765 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時:2021年11月24日 17時