無色の枷 (ページ11)

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「ハァ…可愛い……僕の…A……」

「離し…て…！！」

両腕を頭の上で押さえつけられ、完全に自由を奪われたAは影汰をキツく睨みつける。
しかし、熱を帯びた頬に潤んだ瞳で睨む彼女の表情は、彼をさらに興奮させる材料でしかなかった。

影汰は彼女の頬をなぞりそのまま唇に指を沿わせると、堪らず愛おしそうにキスをした。

「んっ…んん……ｯ」

「……っ…ハァ…」

唇が離れると、Aは半ば諦めたような表情で影汰を見上げた。

「…こんなことして、楽しい？」

「楽しいよ。…楽しいし、凄く幸せだ。ずっとこうしていたいくらい……」

「…愛の無い行為に何の意味があるんだか」

「愛はこれから育んでいけばいいよ……大丈夫、きっとAは好きになってくれる」

そう言うと影汰は、服の中に手を滑らせ始めた。
しかし、そこでAは彼に問いかける。

「…お兄さんさ、初めてでしょ？」

「！………………そうだけど、なに？」

「いや、初めてをこんな愛の無い状態で迎えるの…可哀想だなって思って」

まるで惨めな者を見るようにして言うAを見て、影汰は思わず黙り込む。

「正直、誰よりも人の愛を求めてんの…お兄さんだよね？」

「……でも、僕らはもう恋人同士だし」

「へぇ…お兄さんはそんな一方的に決めた約束を愛だっていうんだ。…安っぽい」

「…っ」

「…それに恋人なら、嫌がる相手に無理矢理しないと思うんだけど」

「……」

Aの正論が刺さり、影汰は黙り続ける。
短い沈黙の後、彼は彼女の身体を起こした。

「……ごめん」

「……」

影汰はそのままブラのホックも直すと、手錠を解除してくれた。
自由になった手を確認しようとAが動かすと、彼はその手を強く握りしめる。

「…今日はごめん。確かに無理矢理するのはよくなかったよね」

「うん…」

そもそも誘拐がよくないのだが…とAは感じながらも、一応彼の話に耳を傾ける。

「こういうのは……Aがちゃんと僕を好きになってからにするよ」

「ならないけどね」

「なるよ……なって…！……そしてお互いの気持ちが通じ合えた時、沢山愛し合おう」

「ハッ…気持ちが通じ合う？」

Aは冷めた目で言い放つ。

「そんなこと…あるわけないでしょ」